茨城県鹿嶋への遠〜い出張、片道5時間の往復で本2冊読めました。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
甲子園に憧れていた。予選を勝ち進んだ。でも、決勝戦前夜の悲劇が僕と仲間たちの夢を断ち切った。二十年後、三十八歳になった僕は一人娘を連れて故郷に帰ってきた。仲間と再会した。忘れようとしていた悲劇と向き合った。懐かしいグラウンドでは、後輩たちが、あの頃の僕らと同じように白球を追っていた。僕も、もう一度、マウンドに立てるだろうか――。おとなの再出発を描く長編。
高校野球経験者ならば絶対読むべし。当時のメンバは一生付き合っていく仲間やけど、よくよく考えると甲子園優勝校以外は「最後負けたメンバ」なんですよね。夢の「最後」を共有した仲間は偉大である。そう感じさせてくれる小説です。
手を伸ばせば届くところまで来ていた甲子園は、はるか彼方に遠ざかって、消えた。試合をして負けたのなら、悔しさはあってもあきらめはつく。だが、僕たちには負ける権利さえ与えられなかった。悔しさを噛みしめられるのは幸せなことなのだと思い知らされた。
僕たちがグランドから去ったあの日は、いまにして思えば、子どもからおとなの世界の境目だったのかも知れない。
「俺、甲太くんには『野球選手』じゃなくて『高校球児』になってほしいんだよな」 駆け抜けたほうが速いと理屈ではわかっていても、一塁にヘッドスライディングしてほしい。守備位置とベンチの往復は全力疾走してほしい。真夏の炎天下を走ることや雨の中でボールを追うことの「意味」など問わないでほしい。真っ黒に日焼けしてくれ。家に帰ったら泥のように眠ってくれ。勝ったら仲間と抱き合ってくれ。負けたら、子供のように泣きじゃくってくれ。それが、僕の考える「高校球児」だった。
高校野球とは・・・負けることに真髄があるんだと、・・・どこの学校も負けるのです。負けることが高校野球なのです。・・・負けても胸を張れ、・・・負けることの尊さと素晴らしさを・・・おとなになっても負けることばかりです。・・・人生という名のグランドに立って、幸せという名の白球を・・・熱球を追い続けているのです。・・・