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[門田隆将] 甲子園への遺言


甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯

『甲子園への遺言』は、平成16年7月1日、多くの野球人、生徒たちに惜しまれつつ世を去った、不世出の打撃コーチ・高畠導宏氏の生涯を描いたノンフィクション作品です。高畠氏は古くは南海の藤原、ロッテの落合、高沢、西村、そして最近ではイチローや田口、小久保など、数多くの名選手を育てたプロ野球界伝説の打撃コーチです。多くのプロ野球選手たちが彼に教えを乞い、30年にわたって第一線の選手たちの技術面と精神面の支えになりつづけました。ところが、その高畠氏は五十代半ばにして一念発起をします。通信教育で教職の勉強をはじめ、プロ野球球団のあまたの誘いを蹴って高校教師の道を選んだのです。そして、平成15年春、福岡県の私立筑紫台高校に新人教師として着任します。社会科教諭として教鞭ふるう一方、野球部を甲子園に連れて行きたいと考えたのでした。諦めや疲労感に支配される五十代に、なかなかできることではありません。ところが、長年の無理がたたったのでしょう。高畠氏の体はそのとき重大な病気に冒されはじめて…。こんなに凄い高校教師がいた!──高畠氏はなぜ転身を決意し、そして、そうまでして高校生たちに何を伝えようとしたのでしょうか。


自分の脚で高い頂を目指す人生もいいが、コーチとして、人格者として、哲学者として自己を極めて、人々に高く美しい山を登る過程や楽しさを伝える人生も素晴らしい、高畠氏の人生を読んでみてそう思った。

<伸びる人の共通点>素直であること/好奇心旺盛であること/忍耐力があり、あきらめないこと/準備を怠らないこと/几帳面であること/気配りができること/夢をもち、目標を高く設定することができること

コーチには2種類あります。マニュアルコーチと応用コーチです。マニュアルコーチは決まったことしか教えられないコーチ、すなわち引き出しがひとつしかないコーチです。実はこういうコーチがほとんどなんですよ。普通のコーチは、しっかりした眼がないから、選手が陥っている現象をただ口にすることしかしません。例えばバットが下から出た時、高さんは、単に、バットが下から出ていたぞ、と指摘するより、その原因をズバリいってくれます。ミズ、スラーダー狙ってて、カーブに手を出したやろ?という具合です。アホやなあ、もう1球待てば、おまえの狙ってたボールが来るやないか。待つんやったら最後まで待たんか、アホ、と。

高畠の指導には特徴がある。とにかく選手をほめるのである。ほめてほめてほめまくる。たとえたくさんの欠点が目についても、その選手のよさを探し出してほめまくるのだ。短所を直すより先に長所を伸ばし、そして、気がつくといつの間にか欠点が克服されている。それが、高畠の指導法だ。

高畠さんは、選手が悩んでいないときに教えても意味がないことを知っています。相談を受けて初めて自分の出番がやってくることを知っているんです。

言葉とはなにか。たとえば高めのボールに手を出すなと、監督やコーチがいいますよね。でもこれは最も言ってはいけない言葉なんだということがわかってきました。

30年のコーチ人生で掴んだ高畠の到達点。それは、「才能とは逃げ出さないこと」「平凡の繰り返しが非凡になる」という真理にほかならない。