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[羽生善治] 決断力


決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)

勝負の分かれ目にある集中力と決断力。勝負師はいかにして直観力を磨いているのか?数多くの勝負のドラマを体験してきた著者が初めて書き下ろす勝負の極意を公開する。


小学生のころから将棋が好きで休みの日に近所の子の家に押しかけ将棋をしたり、NHKの将棋トーナメントも欠かさず見てました。少年野球に入ったら監督が将棋が好きで、「オレに勝ったらバット勝ってやる」と言われ雨で試合がない日に名神高速の下の空き地で勝負したらなぜか勝ってしまい、まっさらの木製バットを買ってもらったことがありました。当時は谷川さんや加藤一二三さんが好きで「加藤一二三の矢倉戦法」みたいな本を買って読んだりもしてました。中学生になって以降は野球中心になって将棋をする機会も減りましたが・・・

将棋は駒を通じての対話である。お互いの一手一手に嘘はない。

将棋盤をはさんで1対1の勝負。指し手に自分の意思を詰め込み、相手の指し手にその意図を考えなければならない。例えば欲張った手を指してきたら、「それは欲張りだよ」と、指し手を通じて言わなければならないと、著者は言っています。将棋は頭のスポーツ、頭の格闘技といえますね。

楽観はしない。ましてや悲観もしない。ひたすら平常心で。

まさに勝負師のことばです。以下はその他勝負師のことばです。

若手のプロはカーナビゲーションが使える場所は百キロでもすいすい走っていけるが、いったん山道に入ってカーナビが使えなくなると、なかなか最善手が指せなくなってしまう。

昔少々アマチュアで強い人がいても、プロ棋士には決して敵わなかったそうです。なぜならば、将棋は自分より強い人と戦っていかないと成長しないのです。最近はインターネットで身分を隠して対戦できたり、自分より強い人と指せる環境があるので、アマチュアでも強くなるまでの時間が短縮されているんだそうです。梅田望夫さんの「学習の高速道路」論でもありました。でも1局をまる2日かけて対局するプロのタイトル戦などでは、終盤の究極の場面で勝負を分ける1手など、海千山千のベテラン棋士には簡単に勝たせてもらえないのだそうです。

山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、「選ぶ」より「いかに捨てるか」のほうが重要なのである。

これは僕も最近よく思いますね。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、と。

見た目にはかなり危険でも、読み切っていれば怖くない。剣豪の勝負でも、お互いの斬り合いで、相手の刀の切っ先が鼻先一センチのところをかすめていっても、読み切っていれば大丈夫だ。逆に相手に何もさせたくないからと距離を十分においていると、相手が鋭く踏み込んできたときに受けに回ってしまう。逆転を許すことになる。将棋では、自分から踏む込むことは勝負を決める大きな要素である。私は将棋の醍醐味はそういうところだと思っている。戦って、こちらも傷を負うけれど、結果として僅かに勝っていればいいのだと・・・。

一番気に入った箇所です。なるほど、リスクを犯さないと逆にやられると。野球の投手と打者の勝負にも似たことが言えるかも知れません。強打者に怖がってアウトコースに投げてばかりだと、打者に踏み込まれてガツンと狙われます。少々危険を冒してでもインコースを攻めないとダメですが、投手心理からするとちょっと甘くなって真ん中寄りに入るとホームランを打たれることが脳裏をよぎります。それでも打者に踏み込ませないためにも思い切って打ちを攻めないとだめなんです。野球の場合はキャッチャーのリードに寄るところが大ですが、将棋は1対1、誰も助けてくれません。まさに勝負師の心構えですね。

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。


勝負師、羽生善治を堪能できる一冊です。