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[奥田英朗] 空中ブランコ


空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が……。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!? 直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾!


精神科医・伊良部のもとにやってくる患者は、時代の流れからか家族主義から個人主義に変化したサーカス団の中で周囲との関係がうまくいかず跳べなくなった空中ブランコ乗り(空中ブランコ)、無理にトンガることで弱い自分を隠して生きてきた心優しい尖端恐怖症のヤクザ(ハリネズミ)、義父のカツラを見ると無性に剥ぎ取りたくなる息子(義父のヅラ)、黄金ルーキーが入団してきてプレッシャーからか1塁にスローイングできなくなった三塁手(ホットコーナー)、スターダムに乗り確実に売れると思って世に送り出した自信作が売れずにトラウマからか書けなくなった作家(女流作家)。それぞれ別ストーリーの短編になっていて読みやすいです。バカと天才は紙一重と言う言葉がぴったりの精神科医、伊良部というぶっ飛んだキャラクター、「チームバチスタの栄光」、「ナイチンゲールの沈黙」に登場する厚生労働省の役人、白鳥圭輔を連想させます。不器用で一生懸命生きることによりぶち当たる壁や悩みを抱えた人と、ある意味器用で悩みとは無縁の生きてるだけで丸儲け風の伊良部。この落差、緊張と緩和といった感じの描写が面白いです。