- 作者: 乃南アサ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/01/29
- メディア: 文庫
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女性や老人だけを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返し、自暴自棄な逃避行を続けていた伊豆見翔人は、宮崎県の山深い村で、老婆と出会った。翔人を彼女の孫と勘違いした村人たちは、あれこれと世話を焼き、山仕事や祭りの準備にもかり出すようになった。卑劣な狂犬、翔人の自堕落で猛り狂った心を村人たちは優しく包み込むのだが……。涙なくしては読めない心理サスペンス感動の傑作。
社員旅行のバスの中で読み終えた。自堕落な若者が山奥の人々との交流によって再生していく物語。この作家の小説は「駆けこみ交番」以来2度目ですが、登場人物の心理描写がすばらしいです。特に凝った設定ではないので2時間ドラマにはなり得ないようなストーリーです。でも十分小説としては読み応えがあり、この辺はやっぱり小説(本)でしか表現できない物語だと思う。
どうしてなのか、自分でも分からなかった。本当に、最初は張り切っているのだ。今度こそ続けよう、続けられるのだと、心の底から思うのだ。それなのに翌朝になると、もう気分が変わっている。すべてが馬鹿馬鹿しくて、面倒くさくて、何をやってもうまくいかないような気がしてしまう。その結果、翔人は何もかも放り出してきた。
このくだりを読んだとき、Yasu自身のことやん、と思ってしまった。めっちゃ思い当たる節があるので(笑)。こんなときに背中を押してくれる誰かが近くにいるか、いないか。それによって人の人生は大きく変わるのだと思う。自分で自分の道を切り開けるたくましい人間もいるだろうけど、ほとんどの人がこの小説の主人公、翔人のような感情を経験していると思う。やり直しするには過去の自分に落としまえ(けじめ)をつけないといけないとも説いています。
人は弱いけど、誰かに依って強くなれる、変われる、そんな小説でした。
追記
本の中で、「ダサい」の語源は「ダってサいたま」からきているって書いてたけどホントかなぁ?