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[山下貴光] 屋上ミサイル


屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)

屋上ミサイル (このミス大賞受賞作)

大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。


アメリカ大統領が拉致監禁されたという設定に面白そうと思って読んでみた。テロリストが核弾頭を搭載した弾道ミサイルを東京に向けるかも知れないというアナウンサーの言葉がテレビ画面から伝えられても、果たしてどれだけのリアリティーを持って感じられるのだろうか。人にとって日常とは身の回りのことであってテレビの向こうはすべて非日常の光景であるかのように。2兆を越える営業利益を上げた会社がたった1年で赤字に転落するような世の中であっても、世界金融恐慌や麻生内閣の支持率急落をテレビ報道されてもどこか身近に感じられないのは、意識の低さなのか、平和ボケの症状なのか、変化のスピードについていけてないのか、現実に目を背けているからなのか。どれが正解かは分からないけど。そんなことを考えながら読み進めた。
登場人物のキャラ設定と彼等彼女等の淡々とした語り口は伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を彷彿させる。屋上部のメンバーが段々一致団結していく様は青春小説らしくとっても爽やかだ。「信頼は共有した時間の長さに比例する」という言葉があるが、高校生の主人公はまさにその言葉に当てはまる。なかなか面白かった。