- 作者: 劇団ひとり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれる女子大生。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー。場末の舞台に立つお笑いコンビ。彼らの陽のあたらない人生に、時にひとすじの光が差す―。不器用に生きる人々をユーモア溢れる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デヴュー作。
買ってから半年くらいたってやっと読んだ。期待以上に面白かった。ダメ人間にスポットを当てた小説。うまくいかない人生に思わず道端の石ころを蹴り上げたら、その石ころがヤクザ当たってまたひと騒動的な感じ。・・・?ちょっと違うか。でもそのダメ人間に想いを馳せる人もいたりでなんだかんだで軌道修正しながら自分の生き方を見つけていく。5つの物語に分かれているのだが、登場人物があちらこちらで顔をだす。それがまた憎い演出で、短編小説のふりをした長編小説といえば、伊坂幸太郎の「チルドレン」とはまた違った繋がり方をする。「道草」でホームレスの息子でプロ野球が出てくるのだけれどイニシャルがK・Yで、あ、オレと一緒やと思ったのは、どうでもいいことですね(笑)。
小学5年生の時、落とした消しゴムをYさんが拾ってくれたのに、「ありがとう」の一言が言えなくて後悔した。数分後、「さっきは、ありがとう」が言えなくて後悔した。次の日、「昨日はありがとう」が言えなくて後悔した。それから僕は、中学3年の夏、彼女が引っ越すまでの間、ずっと後悔していた。そして好きだった。
登場人物の内面の表現がとてもうまい。ただのお笑い芸人の小説の域を超えている。評価が高いわけだ。