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[東野圭吾] 容疑者Xの献身


容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

天才数学者でありながら不遇な日日を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。ガリレオシリーズ初の長篇、直木賞受賞作。


運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。この世に存在することさえ知らなかった。全ての真実を知ったとき、胸の震えが止まらない。


強烈な帯の文字がハードルを上げてしまったのか、読み終わった感想は、、、普通。ミステリー、謎解きとしては一級品なんだろうけど、人物の描写、背景などがちょっと弱かったのが残念。挨拶しか交わさない隣人に命を賭けるほどの純な愛情を持てるのか、ちょっと冷ややかに見てしまう。読み手のレベルが問われる作品のひとつかも知れない。伊坂幸太郎のような高度な比喩や、違うシーン・時間を交互に読ませるカットバック形式もなく、真っ直ぐにシンプルに物語が進行していきます。逆の見方をすれば余分な描写はできるだけ排除して主題である謎解きでど真ん中直球勝負な作品なのかも。もう一回読んだら良さが理解できる気がする。

人に解けない問題を作るのと、その問題を解くのとでは、どちらが難しいか。

数学の問題に対し、自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうかを確認するのとでは、どちらが簡単か。

数学は宝探しに似ている、と彼は思っている。まずどのポイントを攻めればいいかを見極め、解答に辿り着くまでの発掘ルートを考案するのだ。そのプラン通りに数式を組み立てていき、手がかりを得ていく。何も得られなければ、ルートを変更しなければならなう。そうしたことを地道に、気長に、しかし大胆に行うことによって、誰も見つけられなかった宝、すなわち正解に行き着けるのだ。