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[東野圭吾] 秘密


秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。


一言で「切ない物語」。平凡ながら幸せな日々を過ごしていた杉田平介と妻・直子、娘・藻奈美。事故のバス運転手梶川幸広と妻・梶川征子、その娘・逸見。運転手梶川の前妻・根岸典子と長男・文也。小学校教師・橋本多恵子など。バスが横転する大事故や示談交渉など重い題材にも関わらず読みやすいのは、小学生・藻奈美の身体に乗り移った妻・直子の立ち居振る舞いが小学生のそれではない滑稽さによる。家族愛の物語でもあるし、誰もが持つ人生のやり直しが出来たら願望を揺さぶる物語でもある。個人的には平介と直子が山下公園に行ってユーミンのCDを聴きながら話すシーン。なんか泣けた。本当に藻奈美の身体に宿っていたのは直子なのか?文也と結婚したのは藻奈美だったのか?答えは読み手の想像の中に、だ。