- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/08/12
- メディア: 文庫
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不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。
これは良かった。東野圭吾作品でベスト3に入る感動作だった。親に捨てられ積年の恨みを抱き続けた宮本。どんな仕事も長続きしないダメな宮本はあるとき未来からやってきた「トキオ」とともに、蒸発した彼女を探しに大阪に行くのだが、そこで自身と関係ない犯罪に巻き込まれる。その事件と宮本の出生の秘密が折り重なって進んでいく展開はスピード感満点で引き込まれる。究極の「親の心、子知らず」物語であり、時空を超えたSFストーリーでもあり、ある事件の終盤の展開はなんだか漫画チックだが、面白いから仕方ない。重松清の暖かさと荻原浩の面白さを足したような小説だと思う。
好きな人が生きていると確信できれば、死の直前まで夢を見られるってことなんだよ。あんたのお父さんにとってお母さんは未来だったんだ。人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。どんなに短い人生でも、たとえほんの一瞬であっても、生きているという実感さえあれば未来はあるんだよ。あんたに言っておく。明日だけが未来じゃないんだ。それは心の中にある。それさえあれば人は幸せになる。・・・」
「あんたのせいじゃないよ」もう一度いった。「いろいろあったけど、あんたのせいじゃねえよ。俺の人生だから、俺が落とし前つけなきゃならねえ。もうあんたのせいにはしない。それが言いたかった。ええと、それからもう一つ。俺を生んでくれたこと、感謝するよ。ありがとうな」
明日だけが未来じゃない――その声は宮本の記憶の奥で、今も響き続けている。