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[池井戸潤] 鉄の骨

鉄の骨

鉄の骨

「次の地下鉄工事、何としても取って来い」でも談合って犯罪ですよね?謎の日本的システムの中で奔走する、若きゼネコンマン平太の行末は――。会社がヤバい。彼女とヤバい。次に出る大型入札案件は、2000億円規模の地下鉄工事。この一番札が取れなければ……。


「必要悪」とは、ない方が望ましいが、組織などの運営上また社会生活上、やむをえず必要とされる物事(goo辞書)。「談合」はこの「必要悪」の代表格と言っても過言ではないと思う。必要悪か本当に悪なのかは別として。

大学を出て中堅ゼネコン一松組に入社しマンション建設の現場で働いてた平太は本社の業務課に異動となる。実態は社内外で“談合課”と揶揄されるような業務課の仕事を通じて悩みもがきながらも成長していく。平太の上司の西田、兼松課長、尾形常務。キャラ設定が抜群。また平太の会社の取引銀行に勤務する彼女の萌、萌に思いを寄せるエリート園田。ゼネコン、銀行、政治家、談合の仕切り屋、検察。いろんな視点が盛り込まれていて面白い。怒濤のラストシーンはちょっと泣ける。ぜひ映像化してほしいな。

本当に世の中で言われるほど談合は悪なのか?企業努力もしないで旧来の土俵に甘える企業。利益無視のダンピング受注がいかにまっとうに努力している企業を疲弊させていることか。談合の本当の負の面は不要な企業を生き長らえさせること。自由競争の行き着く先に幸せはあるのか?作者は本書でそれを問うている。第142回直木賞候補、第32回吉川英治文学新人賞受賞作品。