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[三浦しをん] 神去なあなあ日常


神去なあなあ日常

神去なあなあ日常

美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。


横浜で生まれ育った平野勇気は高校卒業と同時に三重県中西部の山奥にある神去(かむらり)村に送り込まれ林業の見習いとして生活を始める。携帯も通じず終電が19時台という山村で大自然の神秘と向き合い成長する勇気。高校教師との恋の行方とともに、村で48年に一度行われるというクライマックスの大祭は山肌を大木に乗って滑り落ちる儀式で男をあげる村一番のイベント。テレビで見たこともあるような。読後は林業に対するイメージが変わり山村集落の家族的生活にほんわかさせられた。テレビ番組『田舎に泊まろう』を体感できるような本。林業を知るという意味では中高生の課題図書とかにもぴったりだと思う。

神去の住人が「なあなあ」を大事にしているのは、百年単位でサイクルする林業をやってる人が多いこと、夜に遊ぶ場所もかうて暗くなったら寝るしかないこと、この二つの理由によると思う。

それ、『俺詩集』!声にならない叫びを上げて飛びかかる。くそー!机の引き出しに隠しといたのに、勝手に開けたな!「返せよ!」「やだ。これをコピーしてあんたの友達に配られたくなかったら、おとなしく神去村に行きなさい」

雪の重みで折れてしまう木が出てくることも、林業をやっていたら受け入れなければならない。すべての木が計画どおりに育つわけがない。雪で折れる木も生き物。それを防ぐために精一杯、的確に手早く雪起こししていく人間も生き物。鳴いたり動いたりしない木もたしかに生きていて、それと長い年月かけて向き合うのがこの仕事なんだってことに、俺は神去に来て一年経って、ようやく気づきつつある。

庭のテーブルで巨大おにぎりを食べた。梅干しやほぐした鮭とともに、なぜかコロッケまで埋まっている。「お、みきの機嫌がええみたいやな」飯粒のあいだから顔を出したコロッケを見て、ヨキはうれしそうだ。なんだか占いみたいなおいぎりだなあ、と思った。

俺はなんとなく、植物は二酸化炭素を吸って酸素を出すだけだと思っていた。だけどそれは、光合成においては、ということで、酸素を吸って二酸化炭素を出す呼吸も、植物はもちろんフツーに行っているんだ。「だかたな、人間の都合で木を植えまくって、それで安心したらあかんのや。やっぱり、大切なのはサイクルやな。手入れもせんで放置するのが『自然』やない。うまくリサイクルするよう手を貸して、いい状態の森を維持してこそ、『自然』が保たれるんや」