Yasublog

本、土木・橋梁、野球、お笑い、などについて書いてます。

余部鉄橋の記憶


5日(土)、土木学会関西支部主催の『新旧余部橋りょうの見学会』に参加してきました。当初100名の募集だったのが応募殺到のために200名に増枠しての開催だそうです。日本で現存するトレッスル式橋梁で2番目に古い余部鉄橋も今年の7月16日で引退し、その役目を新設のPCエクストラドーズド橋に譲ります。

架け替えの主な理由は、強風による列車の遅延や運休の多さと鋼材の腐食の問題の2点です。新橋はPC5径間連続エクストラドーズド箱桁橋が採用されました。




見学会までに時間があったので余部駅のホームに行ってみました。するとホームがいっぱいになるくらいに人がたくさん。鉄ちゃんと思われる人も記念撮影に忙しく動いていました。



余部駅の上から日本海を眺めると絶景が広がります。すごい!


左(海側)が現在の余部鉄橋、右側が新余部橋りょう。この眺めもあと1ヶ月ほど。


このあたりの地区は鯉のぼりいつまで上げてるのかな・・・



集合場所の公民館に戻って橋を見上げると前の見学班が新橋の上を歩いている!まさか見学会で橋の上を歩けるとは思わなかったとです(笑)。


さて僕らの班も現場見学に先立ち公民館で工事概要を説明していただきました。昭和61年の列車転落事故についても説明がありましたが、100年の歴史の中でも悔やみきれない事故もありました。悲劇を繰り返さないように新橋の設計にあたっては模型による風洞実験も行われ最新技術が駆使されています。


トレッスル橋脚の主柱は100年前から一度も変わらず鋼材がそのまま使われているそうです。しっかりメンテナンスすれば100年持つんですね。強い潮風が吹く環境にある余部鉄橋は保守の歴史でもあったのです。


新橋の上に到着。スタンドバイミーっぷりにに参加者のテンションもMAX!


見学中に運良く鉄橋を列車が通過。参加車のテンションがケーブルのテンションを越えた瞬間です!


本物のアウトケーブルの定着部。


トンネル側の1.5径間の桁はS字になっていて、運休して鉄橋を撤去(ダジャレか)したあと3800トンものPC桁をジャッキで4m海側へスライドさせます。橋脚とPC桁の間にステンレス板(だったと思う)を敷いていおり、摩擦係数が小さいその材質だと重量の十分の一の力でスライドできるそうです。P1橋脚で3300トン、橋台で500トンの反力があるのでそれぞれ330トン、50トンの力で水平ジャッキに加圧してあげればスライドする計算ですね。実際に実証実験も行われたようです。



余部鉄橋の名物である列車からの眺望を新橋でも残したいとの思いで、防風壁は透明なアクリル板が採用されています。水族館で使われているガラスの同じものだそうです。



橋上見学の時間も終わって下山。道脇の昇りの文字がちょっと切ない。感傷的にさせます。。。



海に近いところでは、架けかえの理由のひとつでもある鋼材の腐食も見てとれます。


黄色いシャツの土木学会関西支部のみなさま、すばらしい企画をありがとうございました!


工事中の様子は香美町のHPにも詳しくアップされています。


見学会で買った資料に建設当時のリベット打ちの写真が載っていました。これは貴重な写真です。はじめて見ました。こういった資料を見ると土木とはまさに経験に学ぶ経験工学だということを実感しますね。


余部鉄橋 - Yasublog