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[カーマイン・ガロ] スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則


スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則

聴衆を魅了し続ける世界一の経営者。iPhoneiPadiPodを成功に導いたプレゼンの極意を解き明かす。


アップルのジョブズやソフトバンクの孫さんはプレゼンの達人を言われています。この本はジョブズのプレゼンがなぜ人を惹きつけて止まないのかを解説しています。一言で言うならばジョブズのプレゼンには人の心を動かす「ストーリー」があると言えます。どうやって心を動かすかはやっぱり「仕掛け」があって本書ではそのテクニックを学べます。別の言い方をすれば良いプレゼンと悪いプレゼンの違いは、ストーリーがあるか、ないか、その一点に尽きるのです。商品やシステムの機能の説明に終始する人がいますが、聞き手を置いてきぼりにする悪いパターンです。この商品を購入して使うとどんな素晴らしいことが待っているのか、を説明できるとよいですね。逆を言えばそれを説明できない商品はコンセプトがないイマイチな商品と言えるかも知れません。
よくお客さんを前に新商品のプレゼンやデモを実施して、「いいシステムだというのは分かるんだけどね・・・」で終わってしまうことがあります。新しい業務システムを導入する理由は2つしかありません。コストを削減するか、売り上げを増やすか。商品コンセプトが不明確でどっちつかずの商品はたしかに売りにくいです。

本書の後半にこんな例えが紹介されていました。

有機栽培の大手と仕事をしたときのことだ。役員が準備していたプレゼンテーションには有機栽培の果物や野菜のほうがよいと示すさまざまな統計があふれていた。有機のよい点がわかる統計ではあったが、心が動く瞬間がなかった。そのような瞬間を与えてくれたのはある農家の人の話だった。「昔、ふつうの農場で働いていたころは、家に帰って子どもたちにおかえりのハグをしてもらえなかった。まずシャワーを浴び、服を洗って消毒しないといけなかったからね。今はレタス畑から子どもたちの腕の中へ飛び込める。体に有害なものがついていないからね」

アップルのようにBtoCビジネスと僕の会社のようにBtoBビジネスでは違いがありますが、聞き手の心が動く瞬間がよくわかる例だと思います。非常に参考になりました。

これは、人を惹きつける力を持つコミュニケーターに共通する能力である。難解な製品や日常的な製品に新たな意義を持たせる能力だと言ってもいいだろう。スターバックスのCEO、ハワード・シュルツはコーヒーを売っているのではない。彼が売っているのは、職場でもなく家庭でもない「第三の場所」だ。資産形成や金融問題の大家、スージー・オーマンは信託やミューチュアルファンドを売っているのではない。彼女が売っているので、金融という世界における自由という夢である。同じように、ジョブズはコンピューターを売っているのではない。彼が売っているのは、人の可能性を束縛から解き放つツールなのだ。

クリフ・アトキンソンは著書『箇条書きのかなた』にこう書いている。「プレゼンテーションの質を大きく高めたければ、するべきことはただひとつ。パワーポイントを開く前にストーリーを作ることだ」

スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは、大昔にアリストテレスが考案した、人を説得する5ステップを満足している。

  1. 聞き手の注意を引くストーリーやメッセージを提出する。
  2. 解決あるいは解答が必要な問題あるいは疑問を提出する。
  3. 提出した問題に対する解答を提出する。
  4. 提出した解答で得られるメリットを、具体的に記述する。
  5. 行動を呼びかける。ジョブズの場合は、「今すぐここを出て買ってくれ」といったところだろう。

自分にとってメリットにない売り込みやプレゼンテーションをのんびり聞いてくれるほど、みんな暇ではない。ジョブズのプレゼンテーションをよく見ると、製品を売ろうとしていないことがわかる。ジョブズが売ろうとしているのは、よりよい未来という夢なのだ。

リーダーは未来というものを明確にイメージしているとバッキンガムは言う。「リーダーとは未来に魅せられた人をいう。変化を求めて動かずにはいられない、事態の進展がじれったい、現状に大きな不満を持っている――こういう人が、いや、こういう人だけがリーダーである」

本書を読めば、アイデアを上手に売り込むためのテクニックは身につくだろう。しかし、自分のサービス、製品、会社、主義主張に対する情熱がなければ、テクニックなど何の役にもたたない。コミュニケ―ジョンの極意は、情熱を心底かたむけられるものを見つけること。そして、見つかるのは「モノ」ではなく、モノが顧客の暮らしをどう改善するのか、であることが多い。

聞き手はリストを好む。では、リストで提示すべき項目はいくつなのだろうか。魔法の数字は3だ。コメディアンは、2よりも3のほうがおもしろいとわかっている。作家は、4よりも3のほうが話が盛り上がるとわかっている。ジョブズは、5よりも3のほうが説得力があるとわかっている。映画、本、演劇、プレゼンテーション・・・名作はいずれも3幕構成となっている。
海兵隊もこの問題を詳しく検討し、2や4よりも3のほうが効果的だとの結論に達した。だから、海兵隊の組織は3を基本に組み立てられている。

「語る情報を入れる場所を私の頭の中に用意してくれないと困るんだ。問題提起なしに解決策を提示するアントレプレナーに用はないよ。カップも用意せずにコーヒー(アイデア)はいかがですかって言われてもねぇ」

ドイツの有名画家、ハンス・ホフマンの言葉に「簡素化というのは、不要なものを削り、必要なものの言葉が聞こえるようにすることだ」というものがある。本質的ではない情報を削ってすっきりさせることにより、ジョブズは、使いやすさや明快さという目的を達成するのだ。

ジョブズのスライドには禅の美学があると『プレゼンテーションZen』でガー・レイノルズは指摘する。「ジョブズのスライドでは自制と簡素化、そして余白が上手に使われている」。ビジネス系の人間はスライドにぎっちり詰め込みすぎるからいけないと、レイノルズやトップクラスのデザイナーは口をそろえる。