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[中沢康彦] 星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則


星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

軽井沢の老舗温泉旅館から、日本各地でリゾート施設を運営する企業へと飛躍した星野リゾート。その成長の背景には、星野佳路社長が実践した「教書通りの経営」がある。本書は、星野社長が戦略やマーケティング、リーダーシップの参考にしたネタ本30冊と、それらの本から学んだ理論の実践事例を一挙に紹介する。


観光立国戦略会議?のメンバーでもある星野氏は旅館・リゾート経営のカリスマ的存在と言っていい。Yasuも2度ほどスキーで旅行したトマムリゾートの再建も星野リゾートが請け負い成果を上げている。印象的な言葉は、企業経営における「アート」と「サイエンス」。コモディティ化している観光業は差別化が図りにくいので地味であるが「サイエンス」で経営すべきであり、本棚に1冊ぽつんとあるような普遍的な教科書が参考になると述べている。一方、経営者個人の素質に基づく「アート」経営といえば、アップルのスティーブ・ジョブズなどが当てはまるのでしょうか。その他、旅館の再建過程の話など興味深く読むことができた。


星野社長が参考にしたという経営の教科書は以下のとおり。全部は無理として2冊くらいは読んでみたい。

企業経営は、経営者個人の資質に基づく「アート」の部分と、論理に基づく「サイエンス」の部分がある。私は経営職に就いた当初から、自分にアーティスティック経営判断を行う資質があるとは思っていない。どんな時にも自分の直感を信じることができず、それはあまりにもリスクが大きいと感じてしまう。私は自分の経営手法の中でサイエンスを取り入れる必要性を感じ、教科書を根拠とする経営を始めた。

「それまでの経営書はお客様視点に立ったマーケティングを強調するものが多かった。そんな中で、ライバルの動向こそが重要というポーターの理論は目からうろこで、強く印象に残った」

コトラーの競争地位別戦略論では、市場での企業の地位は4つに分かれる。リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーである。そして、それぞれの地位に応じて打つべき戦略の定石があるというのだ。

製品やサービスの質に差がなくなったとき、お客様は買いやすい会社、手間をかけずに安全に早く欲しいものが手に入る会社を選ぶ―。星野社長は同書のこんな指摘に衝撃を受けた。「コモディティ化が進んでも、アクセスを高めることで他社に差をつけて勝つ。そんなビジネスモデルがあることを知った」

企業は売り上げを増やそうとして、製品のラインナップを増やそうとすることが多い。しかし、ライズによると、「短期的に見ると、製品ラインの拡張は常に売り上げを増大させる」が、「長期的な効果は無残」で、結果として売り上げが大きく落ち込む。そして、「マーケティングにおける最も強力なコンセプトは、見込み客の心の中にただ1つの言葉を植え付けることである」と主張する。

ハートの論文は、製造業で一般的な「保証」がサービス業にはほとんどないと指摘し、機械よりも不確かな人間が提供するサービスこそ「保証が重要」と力説している。ハートが提唱する保証システムは、約束を実行できなかった場合、顧客に代金を返金するというものだ。返金理由に付帯条件や留保条件をつけず、返金の仕組みを簡単にすることなども求めている。
保証の意義は、顧客に安心感を与えることだけでない。ハートは、サービスを提供する社員がサービスに責任感を持つようになる、と指摘する。

星野社長がこのときに意識するんは、「スタッフの気づき」である。「大事なのはアイデア自体ではない。出てきたアイデアの中から、このアイデアが好きだ、共感できると気づいてもらうことだ」

ブランチャードの理論がユニークなのは、お客様の要求が自分たちの目指している製品・サービスと合致しない場合、「要求を無視するべきだ」と断言している点である。旅館・ホテルはすべてのお客様を満足させようとするあまり、サービスを増やし過ぎることが少なくない。これはコスト増を招き、経営を圧迫する。「ターゲットが絞られていないと、どのお客様にとっても不満はないが、感動もない施設になってしまう。共感度の高いコンセプトがあれば、スタッフにとって分かりやすい判断基準になる。どのサービスが必要で、どのサービスを切り捨てるべきか、すぐに分かる」。星野社長はこう強調する。

内村鑑三が星野社長の祖父に送った『成功の秘訣』の一節)
人もし全世界を得るとも其霊魂を失はば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非ず。品性を完成するにあり。