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[三枝匡] V字回復の経営


「2年で黒字化できなければ、退任します」―。戦略的なアプローチと覚悟(高い志)を武器に不振事業再建に取り組む黒岩莞太は、社内の甘えを断ち切り、業績を回復させることができるか。実際に行われた組織変革を題材に、迫真のストーリーで企業再生のカギを説いたベストセラー。


5年ほど前に読んだ本ですが、ふとしたきっかけでまた再読してみました。2度目なのでポイントをメモしながら読んだのですが、不振事業の再生に必要な行動、「退路を断つ」、「強烈な反省」、「気骨の人事」などいろいろ勉強できた気がします。失敗したことに対する反省は少ないですね。少ないというかまったくないかも(笑)。組織だって反省することは、失敗した個人を責めることになるという感覚がそうさせているのだと思うけどね。罪を憎んで人を憎まず。失敗を反省して人を責めず。失敗は財産です。そんな企業文化が必要ですね。

とりわけ組織が肥大化した企業では、改革を狙い撃つ弾は、前面の敵よりも、しばしば後ろの味方陣地から飛んでくる。「企業戦略の最大の敵は、組織内部の政治性である」。


病状1
一般に企業の業績悪化と社内の危機感は相関しない。むしろ逆相関の関係だと言ったほうがいい。つまり、業績の悪い会社ほどたるんだ雰囲気であることが多く、業績の良い成長企業のほうがピリピリしている。


病状2
組織の危機感を高める経営手法は「危機感が足りない」と叫ぶことではない。経営風土を変える経営手法は「風土改革をしよう」と叫ぶことではない。社員の意識を変えるために「意識改革をしよう」と叫んでも意識は体して変わらない。


病状12
組織の「政治性」は「戦略性」を殺す力を持っている。政治性は、個人の利権・利害の混入、過去の栄光への執着、個人的好き嫌いなどによって生まれ、「正しいか正しくないか」よりも「妥協」重視の組織風土を醸成する。


三枝の経営ノート1
重要なことだが、スターやエリート層のいない組織で変革は絶対に起きない。エリート層とは「選ばれた者」というよりも、「集団への責任を自覚した者たち」と解すべきなのだ。


改革者が有効な手を打つための第一歩は「事実の把握」だ。


病状14
やたらと出席者の多い大会議。ダメ会社症候群の典型。


病状19
顧客の視点はどこへ行った?競合の話は?内向きの話ばかり。


病状20
負け戦をしているという自意識がない。


病状21
個人として赤字の痛みを感じていない。責任を皆で薄め合っている。


病状23
商品別損益がボトムラインで語られていない。担当者レベルの「赤字に鈍感」の集合体が組織全体の危機感不足を構成している。


病状25
赤字の原因を個々の「現場」に遡及できない。社内の行動不足を引き起こしている理由の一つはこれである。


病状29
開発者がマーケティングや市場での勝ち負けに鈍感になっている。何が「良い商品」なのかの定義が社内でずれていることに気づかない。どの答えが正しいかは顧客が知っている。


病状30
ダメ会社ほど開発テーマが多すぎる。


病状36
営業活動のエネルギー配分が管理されていない。営業マンの行きやすいところが、会社として攻めるべきところとは限らないのに。


病状39
会社の中に代理症候群が蔓延している。ラインの推進力が弱いと、その分、スタッフが強くなる。


 
病状42
経営レベルで抜本的に構造を変えなければ直しようがないものを、個人や狭い職場の改善に話をすり替える人が多い。


病状43
組織に感動がない。表情がない。真実を語ることがタブーになっている。ただシラーッとやっている。


病状45
総合的な分析力と経営コンセプトに欠けている。沈滞企業は戦略だけいじくっても事態はよくならないし、現場の問題だけいじくってもダメ。両方をバラバラに扱うのではなく、一緒に遡上に載せないと打開できない。


病状46
事業全体を貫くストーリーの欠如。組織のレベルで戦略が骨抜きにされていく図式。


病状47
目先の対症療法的な組織変更や人事異動が頻繁に行われ、大した効果もないまま、すでに社員は改革疲れを起こしている。


病状48
会社全体たで戦略に関する知識技量が低い。戦略の創造性が勝負を分ける時代だというのに。


病状49
幹部の経営リテラシーが不足している。社内力学に流されやすいのはこのせいである。


病状50
「狭い世間」の社内で同じ考え方が伝搬し、皆が似たようなことしか言わない。社外で何が起きているかにも鈍感。


三枝の経営ノート2
改革の推進者と抵抗者のパターン


改革者は一人ひとりの社員がどの類型に属しているかを見分け、それぞれの類型に適合したコミュニケーションしせいをとっていかなければならない。


A改革先導者(イノベーター)
A1過激改革型
旧体制を過激に否定し、改革論理で先行する人。


A2実力推進(改革リーダー)
強いリスク志向を持っているがバランス感覚があり、論理的、実務的に詰めながら改革を推進できる人。


A3積極行動型
改革リーダーを行動的に支える人。


A4積極思考型
改革リーダーと思想・行動を共にするが、自身がリーダーになるには不向きな性格の人。


B改革追随者(フォロワー)
B1心情賛成型(改革早期フォロワー)
心情的には改革の考え方は「正しい」と思いつつも、リスクを避けて様子見の姿勢をとる。


B2中立型(改革中期フォロワー)
危機感が低く、変化願望も弱い「大衆層」の社員が多く含まれる。まずはお手並み拝見の態度。


B3心情抵抗型(改革後期フォロワー)
攻撃的態度まではとらないが、改革に明確な距離を置く。軽度の面従腹背。


C改革抵抗者
C1確信抵抗型(反改革リーダー)
改革を「正しくない」と断じる論理ばかりか、改革者を個人的に「好きになれない」という強い感情を併せ持っている。強度の面従腹背。


C2過激抵抗型
改革者と表立って対決し、場合によっては組合や法的問題にまで持ち込むなど突出行動をとる。最後は退職ないし係争のケース。


D人事更迭者
D1更迭淡々型
過去の自分の責任を認識し、潔く淡々と後任への橋渡しを行って退陣していく。


D2更迭抵抗型
自分がやめることを納得せず、改革者への抵抗を周囲に煽りつつ退陣していく。


E傍観者(外野席)
E1上位関係型
たとえば本社人事部、経理部など、改革部門に対して牽制機能を有している上位組織や、社内取引の相手部署の人々。時に「世論形成」に無視できない存在。


E2完全外野型
組織上の関係はないが、過去にその部署にいたことがある社員、社内の同期生や友人、取引先の社員など。最大の存在は家庭の配偶者。


成功する改革では、強い改革者が「分布の移動」を恣意的に引き起こす。


「人選のカギは気骨と論理性。それさえあれば、あとはめちゃめちゃどついて鍛えればいい。すぐに光ってくるさ」


要諦2
組織カルチャーの変化は必ず、組織内で起きる「事件」(大きな出来事)を触媒にして進展する。事件を避け、なるべく静かに、無難に事を進めようとする経営者や管理職では、その組織文化を変えることはできない。


要諦4
人間も組織も、「カオスの縁」すなわち秩序から混沌に落ち込むその瀬戸際に立たされたときに、脳細胞がもっとも活性化され、創造的な思考が湧き上がり、柔軟な行動が生まれ、新しい変化への適応が最も早く進む。


よく「必要は発明の母」た言うが、同じような言い方をすれば、「カオスは変化の母」である。


要諦5
改革の努力がうまくいかなかったときの落としどころ、つまり「最悪のシナリオ」は、リーダーの腹の中で初めからある程度計算しておくことが必要である。


「そこで合宿一日目はまず『負け戦』の原因を徹底的に洗い出すところから始めます。それによって、改革の押しボタンを押します」


500枚のカード
顧客の不満は何が。なぜ、れわれはそれを満たせないのか?(ありったけをカードに書いていく)


競合はなぜわれわれより強いのか。その負け戦の原因は何か?


部署と部署の連携の問題点は?
リーダーシップの取り方。それについて起きている問題は?


これまでの事業戦略の問題点は?


要諦7
カードを何百枚出したところで、あるいは、停滞企業の病気をその会社をその会社の「社内常識」でいくら分類したところで、抜本的解決の糸口は見えないことが多い。今まで繰り返された議論がまた繰り返されるだけである。


「社員に新たな『共通言語』が生まれたとき、始めて改善のプロセスが始まる。それは新たな組織カルチャーを作り上げるための第一歩である」


[改革のコンセプト1]事業の原点「商売の基本サイクル」
開発→生産→販売→顧客のサイクルを回して顧客に商品やサービスを届けている。競争相手も同じことをしている。「創って、作って、売る」


要諦9
「創って、作って、売る」は企業競争力の原始的構図であり、それをスピードよく回すことが顧客満足度の本質である。


五十嵐はその会社で、不効率の発生源を一つひとつ探っていた。するとそのほとんどがそれぞれの部署の内部ではなく、部署と部署の境目で起きる停滞によって発生していた。


旧来の工場では、それぞれの工程の中で最適化が図られているものの、工程と工程の間で停滞が顕在化し、全体としては高コストの生産ラインになっていることが多い。


「もしアスター事業部の『時間連鎖』をダントツに速くすることができたら、どんな効果を生むのか討議したいと思います。発想の原点は『小さい組織』です・・・スモール・イズ・ビューティフルです」


仮説検証の手法をうまく使えば、分析やシナリオ作りの作業時間を大幅に短縮することができる。熟練したコンサルタントはこれに長けている。


本社の中で、本来なら経営の枢軸にいて「経営の面白さ」「経営の創意工夫」に生き甲斐を見いだすべき日本のエリートの多くが、分業の機能別組織に閉じこもり、椅子の脚だけ作っているパーツ職人になっているのではないか。


「小さなビジネスユニットなら、今よりも、みんなが顧客を近くに感じるようになる。それで皆の切迫感が高まる。自分で『商売の基本サイクル』を速く回そうとするだろう」(中略)このディスカッションは「単なる仮説として議論すればいい」と五十嵐が気楽さを強調したところから始まった。


「営業組織がビジネスユニットごとにこぶりになれば、全国の営業マン全員を時々集めて、営業方針などを直接説明することができる」(中略)「そうなれば、事業部→アスター工販社長→営業部長→支店長→営業所長→営業マンの5ステップが、一挙に事業部→営業マンの1ステップになる」


やがて、皆が驚く結果が出ました。500枚のうち、実に300枚近いカードが、「解決、または、かなり改善可能」ということで、隣の壁に移ってしまったのです。


組織の短絡化。


[改革のコンセプト2]戦略の連鎖
「今のアスター事業部では、会社が何をやろうとしているのか、皆に戦略のストーリーが見えていないと思います。だから行動がバラバラになるのです」


要諦11
経営改革において「組織の再構築」と「戦略の見直し」はワンセットで検討することが不可欠である。現実味には、組織をいじり回すことを先行させてしまう経営者が圧倒的に多い。


「戦略の内容が貧弱な場合、考えられる理由の第一は、トップの『戦略志向』が弱いこと。戦略立案が放ったらかしにされる場合ですね。そして第二は、戦略の『立案スキル』が不足していること。戦略を編み出す技量や知識が低ければ、陳腐な戦略しか出てこないのは当たり前です」


顧客ニーズは時代の変化とともに変わっていき、それに伴って競争のカギ(KSF、キーボード・サクセス・ファクター)もシフトしていく。現在、われわれの事業は、顧客ニーズの何を満たすものなのだろうか?将来はどう変わるのだろうか?


誰が本当の競争相手なのだろうか?


国民の知的レベルの低いほうが治世しやすいとするいわゆる愚民政治を行えば、為政者は君臨し続けることはできるかもしれないが、国の長期の発展は起きず、国民は貧困なままである。会社の経営にも同じことが言える。


各部署固有の問題
事業全体の「事業戦略」を明確に示せば解決できる問題点。個々の「商品戦略」を明確に示せばよくなる問題点


「人の評価」のシステムを変えれば解決できる問題点
「数値管理」つまり経理報告や原価計算などの手法をよくすれば解決できる問題点
「情報システム」を変えれば解決できる問題点
「教育・トレーニング」のプログラムを充実すれば解決できる問題点


各部署の固有問題として、それぞれの内部で解決改善に取り組むべき問題点


[改革のコンセプト3]事業変革の原動力
経営風土を変えるために「風土改革をしよう」とか、意識を変えるために「意識改革をしよう」などとそれ自体を目的化したところで、業績向上に辿り着くことは難しい。(中略)組織はその構成メンバーの大多数が、実際の自分の仕事のうえで、「目的」と「意味」を鮮明に意識し共有しない限り、組織エネルギーを発揮しないのだ。「社員のマインド・行動を束にするには、1.明確な『戦略』が示されること、2.社員が迷いなく走れるようにシンプルなビジネスプロセスが組まれていること、この二つがカギだ」


「経営戦略なんてただの道具・・・それを書き上げただけで何かが解決するわけではない。その証拠に・・・膨大な時間をかけたのに実行されない計画がたくさんあるじゃないか」


要諦13
事業を元気にするには、「商売の基本サイクル」を貫く「五つの連鎖(価値連鎖、時間連鎖、情報連鎖、戦略連鎖、マインド連鎖」を抜本的に改善しなければならない。複雑な組織をそのままにしてこれらの連鎖を一つひとつこね回してもなかなか改善効果は出ない。


要諦14
「強烈な反省論」は、イコール「改革シナリオ」の出発点である。経営幹部や社員が反省論に共鳴すればするほど、彼らは改革に向けて結集していく。


要諦15
企業変革ではスピードに関する組織カルチャーを最初にリセットしないと勝利の方程式は動き出さないことが多い。


要諦17
事業変革のシナリオ作りでは、「なんでもあり」であらゆる選択肢をオープンに考える権限を与える。とりわけ人事問題を含めることは必須である。「そんなことまで考えなくていい」は禁句である。


要諦19
前向きに進もうとしている人々を守るのは改革リーダーの最大の責務である。そのためにガンが見つかれば、冷厳に排除しなければならない。それを蛮勇と呼ぶ。


私はこれまで、社内の善玉・悪玉を組織や人の単位で分けていました。しかしそれが間違いだとわかってきたのです。つまり、この人が善玉、あの人が悪玉、あるいは営業が善玉、開発が悪玉とかいう分類ではなく、社員一人ひとりの中に善玉・悪玉が同居しているのです。


要諦21
計画を組む者と、それを実行する者は同じでなければならない。他人にやらさることを前提に立てた計画は無責任になりがちである。あとで失敗の原因を計画のせいにすることもしばしば起きる。


要諦23
人々に「強烈な反省論」を迫るときには、徹底的な事実・データに基づく追い込みが不可欠である。言い切る確証かま得られないこと、反論される余地のあることはプレゼンの内容に含めてはならない。


要諦24
古い体質の個人を作り上げたのは会社自身の責任てある。その視線を忘れずに、特定個人や部署を責めず、古いシステムが現実に引き起こしている問題だけをクールに指摘し続ける。


強烈な反省論とは、過去の呪縛との訣別である。


要諦25
戦略マップとはトップの考えを幹部に徹底する戦略指針。マトリックスにするのが効果的。日本の大企業に多い漫談的、総花的計画書は戦略マップが持つべきコミュニケーション効果が薄い。


要諦28
筆者の体験では、戦略の内容の、良し悪しよりも、トップが組織末端での実行をしつこくフォローするかどうかのほうが結果に大きな影響がある。戦略を決定したらそれで自分の役割がすんだつもりのトップは多い。


三枝経営ノート4
うまく「変化の分水嶺」を越えることができれば、荷車は自分で転がりはじめる。しかし組織変化がもっとも激しく進行する最適領域のすぐ横には「死の谷」が横たわっている。


要諦31
改革シナリオのプレゼンテーションは、一度に多人数を集めて行うのではなく、なるべく聞き手の表情が分かる人数を相手に、一人ひとりの目を見ながら話しかける。


要諦33
改革シナリオを発表したあとに、社内で意図的な反対行動が現れたなら、改革は「食うか、食われるか」の修羅場に突入する可能性が出てきたときに解すべきである。


要諦34
いったん改革をスタートさせたら、改革者は徹底的に意図を貫徹する。遠慮は禁物だ。


要諦35
「戦略」と「ビジネスプロセス」は、人々の「マインド・行動」に落とし込まれない限り効果を生まない。気骨の人事。それなくして改革の仕掛けは人々を熱く動かすところまで行けない。


社長が社内の古い価値観と対峙し、革新を持ち込むだけの「見識」と「覚悟」、そして「自分の手で現場の問題点を押さえる緻密さ(ハンズオンの姿勢)」を持っているかどうかは、社長が行う人事を見れば一目瞭然である。


要諦36
「気骨の人事」を実現できるかどうかは、企業トップがその改革に本気かどうかの踏み絵になる。


要諦38
一般に経営改革では、突撃しない古参兵よりも、今は能力不足でも潜在性の高い元気者を投入したほうが成功の確率が高い。


仮説は人々を不安にし、猜疑心を生む。大多数の社員は経営の先読みなどできない。それほどの経験も視野も与えられていないからである。だからリーダーが先読みを行い、決断し、皆に分かる言葉でそれを語り、不安と混沌の中を走り抜けなければならない。


要諦40
「危ない橋」の中央では予期せぬ出来事がいろいろ起きる。改革者がもっとも孤独を感じるこの不安定期を乗り切るには、「打つべき手はすべて打った」「自分は正しいことをしている」と腹をくくって自分を支えるしかない。


三枝経営ノート5
改革・八つのステップ

  • 第一ステップ「成り行きのシナリオ」現実直視不足の壁
  • 第二ステップ「切迫感」危機感不足の壁
  • 第三ステップ「原因分析」分析力不足の壁
  • 第四ステップ「シナリオ作り」説得性不足の壁
  • 第五ステップ「決断」決断力不足の壁
  • 第六ステップ「現場への落とし込み」具現力不足の壁
  • 第七ステップ「実行」継続力不足の壁
  • 第八ステップ「成果の認知」達成感不足の壁


要諦42
改革シナリオが明快なら、聞くだけで社員の気持ちの高揚と行動変化かま生まれ、早期に改革効果が出始める。改革一年目に劇的な成果が生まれる場合、その成果の半分以上は、社員のやる気の高まりによると思われることが多い。


要諦43
社員のやる気の高まりによる効果が出ている間に、経営改革の「仕組みによる強さ」の構築を急がなくてはならない。「構造的効果」は二年目が勝負だ。


要諦44
優れた改革シナリオは頭から「頑張り」を求めるものではない。仕組みによる強さのストーリーが明快なとき、気骨のリーダーの下で皆「頑張る」ことを始めたのである。


要諦45
改革では、小さい成果であっても早期の成功を示すことが重要である。それによって「自分たちは間違っていなかった」という自信を得られる。またそれは、改革抵抗者の猜疑心を解きほぐす最大の武器になる。


要諦46
新しいことを手がけるたびに新手法の作り込みを重ねていく。


「私が聞いているのは性能ではありません。お客様の得る経済的利益ですよ」「当社の商品はイメージや流行に左右される商品ではありません。経済メリットを説明できずに、営業マンが商品を売り込むことなどできますか?」


要諦47
改革テーマは広く浅く推進するのではなく、改革の突出部分を設定し、それについてはボトムの問題までに鋭く切り込んで一気に改革する。その間、組織の安定部分として置いておく部分は放っておく。リスクを限定するのである。


変革とは「事件」を軸にして前進するものである。黒岩が太鼓を叩かなければ、これは事件として認知されず、ありふれた一片の茶飯事として片付けられていただろう。


要諦48
早期の成功が出たら、皆で目一杯祝う。飲み屋のツケなど、あとで何とかするのである。


要諦50
競合企業の反応をなるべく先延ばしにするためには、改革や新戦略のことを得意になってマスコミに喋りすぎない。業界の会合などで余計なことは言わない。この時期、深く静かに潜行して内部改革に努める。


次の一手

「組織を変えたい人と、自分は変わりたくなきという人々が引き起こす人間的軋轢が多くの辛さを生みました。すべて「マインド・行動」にかかわる問題でした」


人間の組織はすべて、発展することをやめた途端に腐りはじめます。ですから絶対に会社は少しずつでも成長し続けなければなりません。


黒字にしたことでサクセスストーリーと言ってくださるのは嬉しいですが、それよりも、われわれのこの二年間の最大の成果は何だったか、分かります?太陽産業の本社でもらなかなか気づいていただけない成果・・・それは「人材」ですよ。


過去の改革では、改革者を始めた時点から「ああでもない、こうでもない」の騒ぎが始まったのですが、今回は事前に失敗の落とし穴を見通し、あらかじめ埋めたてたり、横に避ける工夫かまなされていたと思います。


経営者が抱え込む問題のほとんどすべては、経営者自身の力量の反映である。


そんなネガティブな要素に耐えながら改革を何年も続けられるほど人間の緊張は続かないのである。だから改革は一気呵成に行わなければならない。


成功の要因とステップ
1.改革コンセプトへのこだわり
2.存在価値のない事業を捨てる覚悟
3.戦略的思考と経営手法の創意工夫
4.実行者による計画作り
5.実行フォローへの緻密な落とし込み
6.経営トップの後押し
7.時間軸の明示
8.オープンで分かりやすい説明
9.気骨の人事
10.しっかり叱る
11.ハンズオンによる実行


「改革とは『魂の伝授』である」「経営者にとってもっとも重要なのは『高い志』である」