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[池井戸潤] 空飛ぶタイヤ(上・下)


空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

走行中のトレーラーのタイヤが外れて歩行者の母子を直撃した。ホープ自動車が出した「運送会社の整備不良」の結論に納得できない運送会社社長の赤松徳郎。真相を追及する赤松の前を塞ぐ大企業の論理。家族も周囲から孤立し、会社の経営も危機的状況下、絶望しかけた赤松に記者・榎本が驚愕の事実をもたらす。


空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

事故原因の核心に関わる衝撃の事実を知り、組織ぐるみのリコール隠しの疑いを抱いた赤松。だが、決定的な証拠はない―。激しさを増すホープグループの妨害。赤松は真実を証明できるのか。社員、そして家族を守るために巨大企業相手に闘う男の姿を描いた、感動の傑作エンターテインメント小説。


池井戸さんの作品は「鉄の骨」、「下町ロケット」に続く3作目。本作品はトラックの事故をめぐり、売り上げ数十億の運送会社と売り上げ2兆円の財閥系自動車メーカーとのプライドをかけた闘いを描いたもの。この構図は下町ロケットとほぼ同じ。主人公の赤松社長は、事故のあと一部社員の離反にあい、大口取引先からの取引停止通告、業績悪化を懸念したメインバンクからは債権回収を迫られ、家では子どもの万引き容疑でPTA会長として翻弄されるなど、まあよくもここまで不運が重なるものだなと思うくらいどん底に。それでも捨てる神あれば拾う神あり。事故原因の真相を知ろうと奔走する社長の味方も増えてきて・・・。他の作品にも共通するが、悪役(本作では自動車メーカー)の描き方の見事さはさすが。赤松社長もそうであったように“守るべき人がいる人間は強い”。この真理を追求した感動作。