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[立石泰則] さよなら!僕らのソニー


さよなら!僕らのソニー (文春新書)

さよなら!僕らのソニー (文春新書)

ウォークマンに代表される「技術のソニー」ブランドはなぜかくも凋落してしまったのか。それを解くカギは大賀、出井、ストリンガーと続く経営陣の知られざる暗闘にある。そして、経営の失敗がいかに企業ブランドに影響を与えるか、その恐さが見えてくる。ソニーで起こっている経営問題は決して他人事ではない。


スティーブジョブズを賞賛する言葉として「ITロックスター」があるが、戦後に創業し世界的企業に成長したソニーは日本人にとっては「スター企業」である(であったというべきか)。米国で発祥したベースボールで世界のホームラン王となった王貞治メジャーリーグに渡りトルネード投法で一世風靡したパイオニア野茂英雄、言うに及ばずMLBでもシーズン最多安打を記録したイチローのように、トランジスタラジオやウォークマンなどを世に出したソニー創業者の井深、盛田両氏はAVメーカーの世界的スターであった。ソニーには好意的だった著者は、出井氏やハワード氏のCEO就任当初はその手腕に大いに期待したが、ソニーグループの中核事業をネットワーク、エンタメを中心に据え、AIBOのAIロボットなどの独創的な研究開発を打ち切きり、ユーザーが「ときめく」製品を出せないソニーブランドの凋落を嘆き、有名な設立趣意書にはほど遠い経営実態を告発する。フィルムで創業したコダックがデジタルの波に呑み込まれて経営破綻した例にあるように、創業精神の何を守り、何を変えていくべきか、大成功した名門企業ほど難しいだろう。昨年死去した創業メンバーに近い最後の社長大賀氏は晩年、出井氏を後継指名したことを後悔していたとある。やはり「社長の最大の仕事は後継者指名」という言葉はそのとおりなのだと思った。


ソニー設立趣意書より

  • 真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
  • 不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
  • 極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う

経営者の最大のメッセージは人事である。

変化には3種類ある。社会の変化、政治の変化、技術の変化。

ソニーという会社の本質は、過去の成功体験や教訓に「解」を求めないことにあると思っている。つねに、未来に、自分の目で見つめる未来の中に「解」を求めてきた会社であると思っている。

「ソニースピリットは、井深さんの無理難題の産物」

「マーケット・クリエーション(市場を作ること)というのは、マーケット・エデュケーション(市場を教育すること)のことなんだ」