- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/03/08
- メディア: 単行本
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その決断が未来を変える。連鎖して、三つの世界を変動させる。こだわりとたくらみに満ちた三中篇を貫く、伊坂幸太郎が見ている未来とは―。未来三部作。
『ゴールデンスランバー』、『魔王』の世界の延長線上にある作品。見えざる力に直面したとき、人は勇気を試される。小さな勇気が世界を救うのだ。また、特殊能力を持った人が活躍するのも、三部作が重なる最後も『フィッシュストーリー』にように見事だ。伊坂ワールド健在。
「勇気とは、勇気を持っている人間からしか学ぶことができない」オーストリアの心理学者アドラーはそのようなことを言った。
「臆病は伝染する。そして、勇気も伝染する」秘書官はそう言うと眼鏡を触った。心理学者のアドラーはそう言っているんですよ、と。
「ほら、三島。君のせいで、未来のある若者がこんなにしょんぼりしてしまったではないか」三島はとても嫌そうに眉間に皺を作る。それから溜め息をつくと、「間違いは、あなたがそれを正すのを拒むまで間違いとならない」と鋭い声を発した。突然、何を言い出すのか、と私と本田青年がしんとしていると、「ケネディ大統領の言葉だよ」と三島は続けた。「ビッグス湾侵攻に失敗した際、そう言った。人は過ちを犯す。どんな立派な人物も失敗はするし、間違えるものなのだよ、田中君。大事なのは、自分がいけなかったのだ、と認めることだと。間違いを認めることは、何より難しい」