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[横山秀夫] 64(ロクヨン)


64(ロクヨン)

64(ロクヨン)

『警察発表』に真実はあるのか <昭和64年>に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、刑事部と警務部が全面戦争に突入。狭間に落ちた広報官・三上義信は己の真を問われる。怒濤の展開、驚愕の傑作ミステリー!


横山秀夫『64』|文藝春秋|特設サイト


14年前の未解決事件、警察組織の権力闘争、腐敗、自己保身、上司と部下、組織と個人、家族関係、元刑事の三上広報官を中心にさまざまな人間ドラマが濃い。中盤から後半にかけて一気に事件が動き出す場面は鳥肌もの。主人公三上がかつて仕えた陰の刑事部長、松岡参事官がすごく格好いい。理想の上司像がそこにあった。下のインタビューにもあるとおり「組織の中で生きる個人を書いた」作品であるが、書き始めはなんと10年前という。10年も立てば世の中変わってしまいそうだが、「組織と個人」のテーマは常に新しくて古い問題なんだろう。映画化にも期待!

――05年の『震度0』以来、実に7年ぶりの新刊です。

「書き始めたのはもう11年前になります。以来納得がいかずに何十回と書き直しを繰り返しました。3年前には刊行直前まで話が進みましたが、結局納得できず書き直すことにした。担当編集者を絶句させてしまったのを覚えています。時間をかけるほどファンの期待も高まるので、常にプレッシャーとの闘いでした」

――本書は横山作品ではおなじみの「D県警」が舞台です。刑事出身の広報官・三上を主人公に、刑事部と警務部の対立が描かれ、その中で三上は立ち位置を模索します。

「今回は『D県警』シリーズ初の長編という気負いもあり、三上には相当な負荷をかけました。上司だけではなく、部下やマスコミからも圧力をかけられ、家庭でも問題が起こる。そんな状況に置くことで、組織の中で個人がどう生きるべきかを突き詰めて考えることができたと思います。組織と個人の対立は僕の作品の重要なテーマなんです」

2012ミステリーベスト10 国内部門第1位『64(ロクヨン)』 横山秀夫に聞く

 

「外道に正道を説けるのは外道。そういう言葉もある」(松岡参事官)

たまたまが一生になることもある。それは真理だろう。どんな職業に就くか、そこでいかなる職責を担うか、あれこれ理由と来歴は語れても、多くの偶然が作用して今があることは否定のしようがない。

「戦略の話はもういい。すべての道を断たれて、そうなって初めて見える道もあるってことだ。戦略を捨てる道だ。自分たち以外の世界を信じてみる道だ」(三上広報官)