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[有川浩] フリーター、家を買う。

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

就職先を3カ月で辞めて以来、自堕落気侭に親の臑を齧って暮らす“甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。本当にやりたい仕事って?やり甲斐って?自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となったベストセラー長篇小説。


地味な青年が失敗や後悔を通して成長していく感動ストーリーは有川さんの真骨頂ですが、末尾の解説で重松清さんが「有川浩作品の主人公に共通するテイストは、『一寸の虫にも五分の魂』だ」と書いてましたが、まったくその通りと思いました。五部の魂を持った一寸の虫(主人公)。決して持って生まれた能力が高いわけでなく、どちらかというと弱さが目立つ主人公が、人との出会いにより成長するに従って人生を切り開いていく物語は多くの読者に共感されるわけだと思います。

自分の弱さに虚勢を張り、取り繕い、生きてきた。当然のように挫折を経験して、落ちこぼれて。そこで、環境のせいにするのか、自分の弱さに向き合うのか。選択ひとつで、人生は大きく舵をきるのでしょうね。


胸にぐさっと刺さった、筆者のあとがきより。

バカで怠惰な自分を取り繕うのはバカで怠惰であることよりカッコ悪い


バカだったことも苦い間違いもかいた恥も、すべてが今の私にたどり着くために必要な過程だったと思います。


時間を遡ってバカだった自分を一つごまかしたら、きっと今、作家になって自分なりに全力を尽くしている私にはたどり着けていないと思うのです。