Yasublog

本、土木・橋梁、野球、お笑い、などについて書いてます。

「交換」の話

工場長の話

仕事で親しくさせてもらっている工場長A氏は、六大学野球部出身で50歳を超えてフルマラソン3時間台で走るばりばりの体育会系工場長です。
そのA氏は自社の最新鋭工場を惜しげも無く同業者に見学させる人です。最新の溶接ロボットや製造ラインを同業者に見せるのはタブーといえます。インフラ製品である橋梁の製作工場に大きな企業秘密はないですが、各社ノウハウはあるはずです。ゆっくりお話する機会があったときに疑問をぶつけてみました。「なぜ進んで同業者に見せているんですか?最新の製造ラインは隠したいですよね?」と。するとこう返されました。「秘密なんかすぐ知れ渡るに決まっている。設備を導入した業者は他の工場にも営業するし、セールストークでどこそこの工場の最新事例として話すに決まってるやろ」。営業マンからすると納得な話です(笑)。「どうせ知られるんやから、オレは同業者に喜んで見学してもらう。でもタダでは見せへん。見たあと必ず工場の欠点、改善点を最低3つ言ってもらうことを条件にしている。言わへんやつは返さんで(笑)」。もの作りの最前線が工場ですから日々改善活動をしているはずですが、「灯台もと暗し」ではないですが社員では気づきにくいところがあるのかも知れません。先入観のない第3者の目線で指摘してもらうことで、気づきを増やしてかつ働く社員の緊張感も高めていい仕事をしていこうという取り組みなんだと自分なりに理解しました。

飲み会の話

話は変わって会社の飲み会。部長、課長、平社員、いろんなメンバーで飲み会するとします。だいたい上司を持ち上げる会話が多いし、逆もしかり。空気を壊さないバランスで均衡を保っている飲み会ほど寒いものはないですよね。
ここでさっきの工場長の話ですよ。上司は部下に「オレの欠点を1つ言え」と聞いたとします。部下は「ありませんよ(あっても言えませんよ)」となるのは予定調和です。「最新設備の工場を見せてやる代わりに改善点を言ってくれ」の工場長方式を採用して「ビール2杯奢るからオレの改善点を3つ言え」となったらどうでしょうか。なんか言ってしまいそうじゃないですか(笑)?奢りに釣られるとかではなく言い易く感じるのは「改善点」と「ビール」を交換しているからなのだと思うわけです。「若いときの苦労は買ってでもせよ」という言葉があります。一見、等価交換ではないように感じますが、長い目で見たらチャラになるという人生教訓ですよね。

何と交換するか

自身にとって有意なものを人から手に入れようとするとき、何を差し出して交換するか。いろんな考え方があるのかも、と興味深く思った話でした。