Yasublog

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[高代延博] WBC 侍ジャパンの死角

WBC 侍ジャパンの死角

WBC 侍ジャパンの死角

メジャーリーガー抜きで結成された侍ジャパンは、緻密な野球を武器に準決勝までコマを進めた。しかしそこに待っていたのは、意外な落とし穴だった! 名参謀が明かす侍ジャパンの真実。


ずっと『あの重盗』がひっかかっていたので3塁コーチャーの当事者高代氏による書き下ろしを購入してみた。結果的には重盗だけでなく代表監督選び、コーチ選び、前回大会の内実、井端の守備、中田の打撃フォーム改造、フォーカスされた不祥事、深夜の監督部屋での出来事、プロ野球のブロックサインなどマスコミからは決して知る事ができない一次情報に興味深く読む事ができた。プロの延長である代表はすなわち、勝てば官軍、負ければ叩かれる運命であり、重盗のことは水に流そうと思った次第です。


「重盗してもよい」って本当ですか!?
http://yasublog.hatenadiary.jp/entry/2013/03/19/125945

光栄な仕事であることは間違いない。普段、触れることのない球界トップのプレイヤー達と過ごす時間は、指導者の私にとって、お金を積んでもなかなか経験のできない有益な時間である。しかし、WBCのコーチは、一種の名誉職である。前回のコーチ報酬は250万円。本当は200万円だったが、原辰徳監督の尽力で増えた分だ。250万円というのは月給ではない。ほぼ6ヶ月間拘束されて、この程度の報酬では厳しい。P14

与田は、前大会で、ブルペンとベンチの連絡ミスを指摘された時、本当にブルペンの電話が鳴らなかったにもかかわらず、言い訳もせず、潔く、それらの問題を自分の胸にしまいこんだ。私には、その指導者としてあるべき姿が、ずっと心に残っていた。P21

先輩、後輩の上下関係が厳しい韓国リーグでは、大先輩の李承燁が睨みをきかせると、相手投手はインコースに投げてこない。そこでアウトコース一本に絞っておけば成績が残せる。しかし国際試合となるとそうはいかず、アジアシリーズでもラミーゴの外国人助っ人投手のマイケル・ローリーに3三振を喫して失点にからむ失策をするなど散々だった。P33

なにしろ自我の強烈な個性派集団である。そんな連中が、やらされていると感じると、モチベーションは低下する。山本監督がコーチとして参加した北京五輪のチームでは、モチベーションという部分では、崩壊してしまっていたと聞く。当時、私は中日のコーチだったが、中日から参加した岩瀬仁紀森野将彦川上憲伸らは、口を揃えて「もう行きたくない」と言っていた。そこで何があったかは知らないが、信頼という言葉は、存在していなかったことだけはわかった。P55

広島時代には、野球人生最高だと自画自賛する高代オリジナルのブロックサインを作ったことがある。キーと言われる部分をユニホームの色にしたのである。赤なら赤、白なら白。ユニホームの色を触るのだ。これならひとつのサインで6通りくらいのパターンが生まれてバレない。休日に広島湾で釣りをしながらふと思いついたのだ。ヤクルト監督時代に野村克也さんが、「高代のサインだけはわからん」と悩んでいて、広島をクビになった小早川毅彦がヤクルトに移籍すると、さっそく呼びつけて根掘り葉掘り聞き出した。小早川が、このサインをばらすと、「ホー。そうだったか」と感心したそうである。P59

坂本は、自分の近くにボールが来てから捕球の用意をしようとする。グラブを出して待っている時間が短い。準備が遅いのだ。守備の名人は、ノッカーから見てグラブのポケットを長い時間見せてくれる人。そういう人は線でゴロを捕球する意識があるが、坂本の場合は、線ではなく点。P63

橋上コーチの存在は大きかった。その、ミーティングを聞きながら巨人の強さの秘密を見せられた思いがした。山本監督も「いいミーティングをするな」と、この戦略コーチに一目置いていた。データの必要なものだけをピックアップして、シンプルに断定系で自信を持って指示をする。「あれもあるけど、これもある」という、曖昧さが一切ないから、プレイヤーが迷わない。P127

このシーンが、のちのち、ここまでの議論になるとは思わなかった。だが、ひとつ言えることは、この重盗失敗は、我々、三塁、一塁コーチの責任だったということである。結果から言えば、私と緒方が、井端、内川に約束事を徹底しておくべきだったのである。「無理して行くなよ。ひょっとしたら井端が止まるかもしれないから、そこに注意しておけよ」と、内川に一言言っておくべきだったのだ。相手のファーストはかなり一、二塁間によっていた。「もう少しリードできる。その分、遅れてスタートしていいぞ」と指示をしてもよかったのかもしれない。P224