- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/11/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (28件) を見る
トップセールスマンだったエリート課長・坂戸を“パワハラ”で社内委員会に訴えたのは、歳上の万年係長・八角だった―。いったい、坂戸と八角の間に何があったのか?パワハラ委員会での裁定、そして役員会が下した不可解な人事。急転する事態収束のため、役員会が指名したのは、万年二番手に甘んじてきた男、原島であった。どこにでもありそうな中堅メーカー・東京建電とその取引先を舞台に繰り広げられる生きるための戦い。だが、そこには誰も知らない秘密があった。筋書きのない会議がいま、始まる―。“働くこと”の意味に迫る、クライム・ノベル。
昨今またまた食材偽装ニュースが世間を騒がせている。利益至上主義を標榜する組織の前では個人の良心は軽く吹き飛ばされるのが現実なのか。「空飛ぶタイヤ」は大企業によるリコール隠しを扱った作品。一方の本作は大手電機メーカーに勤める営業社員が厳しいノルマ達成のために不正に手を染めてしまった話である。全8章あり各章で異なる人物が主役で登場する短編集のフリをした長編ビジネス小説。登場人物の人物描写が詳細でいい。事務職の女性が退職を機に休憩コーナーにドーナツ販売を置くストーリーの章は示唆的で、無人販売コーナーでの振る舞いに人間性の本質を問うあたり池井戸さん旨い。
いまはっきりとわかる。あのとき、父がいった言葉は、ビジネスに携わる者が決して忘れてはならない金言なのだと。ーー客を大事にせん商売は滅びる。P300
どこの世界にも、常に貧乏くじを引く者はいる。P365
虚飾の繁栄か、真実の清貧か…。強度偽装に気づいたとき、八角が選んだのは後者だった。後悔はしていない。どんな道にも、将来を開く扉はきっとあるはずだ。P403