- 作者: いとうせいこう
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/03/02
- メディア: ハードカバー
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耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず。ヒロシマ、ナガサキ、トウキョウ、コウベ、トウホク…。生者と死者の新たな関係を描いた世界文学の誕生。
東日本大震災で津波に呑まれて亡くなった直後の主人公が想像ラジオのDJになってこちら側の人と想いを交信する物語。死者目線で震災や戦災を考える設定が希少と思う。前触れもなくやってくる災害で亡くなる無念さ、最期に誰に何を伝えたいか、人の数だけある。福島でのボランティアの帰り、ワゴン車の中でのメンバー同士の会話が非常に思慮深く考えさせられる。帰るところがあると揶揄されるボランティア。それでも誰かがやらないといけない。震災がなかったかのごとく復興に突っ走る国。亡くなった人の無念に耳を傾けることの是非。正解のない2つの答えを行き来しながら自分なりに問い掛け続けたい。