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[池井戸潤] 銀翼のイカロス


銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力!新たな敵にも倍返し! !頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?


もう安心して手に取れる池井戸さん作品。「帰ってきた」とキャプションがつくのは昔ウルトラマン、今「半沢直樹」。日航の破綻再生が元になっているのは想像に容易いけど政治と金の問題をサラリと盛り込むあたりはシャレっ気があって面白い。「土地と4億」といったらあの○沢一郎さんを浮かべるやん(笑)。本作品の準主役は中野渡頭取と金融庁の検査官黒崎なんですね。いい意味で期待を裏切ってくれました。また半沢が入社したときの上司、富岡(トミさん)が出世レースに敗れた者の墓場、出向待機組の検査部の次長として登場します。取映像化されたら富岡を誰が演じるか想像しながら読んだけどさて誰になるかな〜、読書メーターでは「泉谷しげる」推しが多かったけど(笑)。


「我々は契約に基づいて帝国航空に融資をし、その管理をしています。あなたは国交大臣の意向とおっしゃいましたが、大臣の私的諮問機関が民間企業にやってきて取引銀行に指示命令の類をなさるというのは、どういう法律に基づいているんですか」P45

「過剰投資になってしまうようか設備資金なら貸さないほうがいい。融資をしないことで取引先を救うことだってあるんだよ」P78

「たとえ相手が政治家だろうと関係ない。この際、きっちり片を付けてやる。ーーやられたら、倍返しだ」P303

富岡がしんみりと問うた。「ま、いくらでもいいけどよ。それであんたに何が残った。名誉か。地位か。だけどな、そんなもんは所詮、張りぼてだ。あんたが信じていたものは、結局のところ全てまやかし。見えていたものは蜃気楼で、あんたがいまいる地位は、砂上の楼閣だ」P316

「お言葉ですが、自主再建が可能なのに、債権放棄をする銀行はありません。我々は、親切でカネを貸しているわけではない。ビジネスとして融資しています。返す力があるのなら、借りたものは返す。そんなことは当たり前の話ではないでしょうか」P340

「この500億円があれば、他で資金繰りに苦しんでいる多くの企業に融資ができる。あなたは航空行政という一面しか考えておられないようですが、この日本を支えているのは帝国航空だけではありません。我々は、多くの一般企業にこそ資金を供給しなければならないと考えております。その社会的貢献こそが、我々の使命に他なりません」「そんなことをいっているんじゃありません」凛とした声で白井が論戦に加わってきた。「銀行は世論を無視されるというんですか」「銀行の与信判断は、世論に左右される性質のものではありません。先日、申し上げた通り、合理的な理屈に基づいて導き出されるものです」P340

「白井大臣は世論とおっしゃいましたが、それはどんな世論ですか。世論はひとつではないはずです。我々銀行の立場を理解する世論はないんでしょうか。自主再建可能な大企業で借金を棒引きするのなら、オレたちを救ってくれよと、そう嘆き憤る世論はないんでしょうか。世論が大多数だから従うのが当然というのは、そもそも、あなた方進政党が掲げてきた弱者救済の政党理念とも矛盾するんじゃありませんか。その点、どうお考えなのかご説明願いたい」P341