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[伊坂幸太郎] 死神の精度


死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。


主人公は死神というすごい設定。これから死を迎える人間を7日間調査をして、対象者の死を「可」か「見送り」を判断する、これが死神に与えられた仕事。とことんクールな死神目線で語られる人間社会。ここで言う死は寿命を全うする死ではなく不慮の事故などのことを言う。死の期限から逆算した7日間から見えてくる人の人生。6つの短編が収まっているがただの短編では終わらない伊坂作品。最後は見事に物語がクロスして立体的な仕上がりとなっている。

煩わしいくらいに、高揚と落胆を繰り返し、無我夢中なのか五里霧中なのかも分からなくなる。病とも症候群ともつかないが、とにかく面倒くさい状況に、溺れそうになっている。「それはあれか」と記憶をひっくり返し、「かたおもい、というやつか」と言ってみる。

「人間が作ったもので一番素晴らしいのはミュージックで、もっとも醜いのは、渋滞だ。それに比べれば、かたおもいなんていうものは大したものではない。そうだろ?」

牛を食べるレストランが、牛の形を模しているのは、気が利いているのか、悪趣味なのか、私には分からない。とにかく広々とした店内はそれなりに賑わっていた。

床屋が髪の毛を救わないように、私は彼女を救わない。それだけのことだ。

「人間というのは、眩しい時と笑う時に、似た表情になるんだな」