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[西加奈子] さくら


さくら (小学館文庫)

さくら (小学館文庫)

ヒーローだった兄ちゃんは、二十歳四か月で死んだ。超美形の妹・美貴は、内に篭もった。母は肥満化し、酒に溺れた。僕も実家を離れ、東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾にピンク色の花びらをつけていたことから「サクラ」と名付けられた十二歳の老犬が一匹だけ。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏に薄い鉛筆文字で書かれた家出した父からの手紙が握られていた―。二十六万部突破のロングセラー、待望の文庫化。


内容の大部分が5人家族の幸せ物語であって読んでいて気持ちのいいホンワカする感じ。兄が交通事故に遭って悲劇の後半になるが、いつも犬のさくらが家族の中心にいてその愛おしい仕草がそれを和らげているかな。「ふつう」と違う人に送る奇異な目線、ふとした瞬間にその立場が180度入れ替わってしまうことがある。見る側と見られる側。知らない世界やったのが、ある日当事者になったり。事故で車椅子生活となった兄が、

誰より地面に近い位置で、必死に空を見ようとしていた。


車椅子からの景色を、事故前の兄は想像しただろうか。意外ととても大きなテーマが込められていると思った。でも、全体的にはそれほど重くなく楽しい内容でした。