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[田中詔一] ホンダの価値観


ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA (角川oneテーマ21)

ホンダの価値観―原点から守り続けるDNA (角川oneテーマ21)

世界の「ホンダ」に40年間勤め、地域執行役員を最後に退職した著者が、内側から見たホンダイズムの本質を語る。本田宗一郎、藤沢武夫という2人の異端経営者が創業以来、築いてきた企業風土、創造性のDNAが、半世紀以上どう引き継がれてきたか、豊富なエピソードでつづる。


戦後生まれで世界的企業に成長した会社の代表格はソニーとホンダでしょう。ソニーは井深氏と盛田氏のコンビ、ホンダは本田氏と藤沢氏のコンビでそれぞれ技術と経営の舵取りを行って成功したといわれています。
この本は「第1章 経営者の引き際とは何か」ではじまります。いつの時代にも天才がいていわゆる創業者の時代は企業はそのカリスマ性も手伝って成長しますが、「創業者後」にその企業の継続性が問われます。著者は本田氏と藤沢氏が引き際を誤まらなかったことがホンダの成長の最大の秘密だと言っています。またその後の社長も「近頃自分の意見がすんなり通り過ぎるようになったから」と言って退任したりと、経営の舵取りと同じくらい引き際が大切というDNAがホンダには内蔵されているのでしょう。

「書類の山は無能の証明」/「三現主義」、現場、現物、現実/「ヒーローを作るな」/「経営の経の字の糸偏はタテ糸だ」布を織るときタテ糸は動かずにずっと通っている。タテ糸が真っ直ぐに通っていてはじめてヨコ糸は自由自在に編んでいける。(ホンダはバブル時代にも本業から反れるものには手を出さなかった。本業とは移動手段=モビリティ、2輪、4輪、アシモ、飛行機)/藤沢氏が資金繰りに奔走し融資を渋る銀行側に「このバランスシートの資産には数字が載っているだけで、本田宗一郎の才能というものが載っていない。載っていればもっといいバランスシートなんだ」と言ったという。/「松明は自分の手で」藤沢氏はまだ創業間もないころから、日本企業で前を行くものの明かりにくっついていく行き方を戒めていた。大きな松明をもち大企業の照らすところは、先頭の人にとってはいいけれど、後者の者にとって良いか悪いかは分からない。/「桑の根っこを引き抜くな」企業にとって安易な方向転換は危険という教え。/「三つの喜び」、(研究所と工場は)作って喜び、(営業は)売って喜び、(お客さんは)買って喜ぶ。/「人間、入れるところと出すところは大切にしなきゃいけない」要は、採算性と天秤にかけて逡巡する次元の問題ではないということだ。「人間」という次元でやるべきこと、やってはいけないことを考えることが必要なのだ。

企業であれ、個人であれ、違いというものは、どういう価値観を持って行動するかによって生じるのではないか、と思う。ホンダは「ホンダらしさ」を強調する時代を経て、「ホンダならでは」の企業活動を意識してきているようだ。企業としての目標を、業界での規模や順位におくのではなく、「存在を期待される企業」になることにおいている。