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[荻原浩] 四度目の氷河期


四度目の氷河期 (新潮文庫)

四度目の氷河期 (新潮文庫)

小学五年生の夏休みは、秘密の夏だった。あの日、ぼくは母さんの書斎で(彼女は遺伝子研究者だ)、「死んだ」父親に関する重大なデータを発見した。彼は身長173cm、推定体重65kg、脳容量は約1400cc。そして何より、約1万年前の第四氷河期の過酷な時代を生き抜いていた―じゃあ、なぜぼくが今生きているのかって?これは、その謎が解けるまでの、17年と11ヶ月の、ぼくの物語だ。


人と違うって何?顔の色?母子家庭?注意欠陥障害?悩み成長し悩み成長し。繰り返しながら成長するワタルの物語。淡い恋、母親の存在。陸上短距離、やり投げ。思春期の少年、氷河期のマンモス、クロマニヨン人、東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-を混ぜ合わせたようなスリリングで泣ける物語だ。ラスト4行で泣かせるは流石の荻原浩

他人の存在を必要としていない時の孤独はちっとも気にならないけど、誰かが必要だとわかった時の孤独は、やっぱりつらい。ぼくの心臓はフリント石でできているわけじゃないから。

そうだよ、肌色はひとつじゃない。黒に近い褐色だったり、白に近い薄い色だったり、白にピンクや茶を加えた色だったり。人類の先祖が長い年月をかけて移動したことによって生まれた地域格差だ。

みんなが見ているものと、自分に見えているものは、同じものなんだろうかって、不安になることはないかい。ぼくにはしょっちゅうある。

ロシア人がゼネラル・モーターズのクルマに乗る時代が来るなんてね。世界中の人間がアメリカ人と同じ生活をしたがっている。全人類のその望みが叶った時が、地球の滅びる時だな。せめてこの子たちが天寿をまっとうするまで、地球に持ちこたえてもらいたいものだよ。

ぼくはずっと自分を人とは違うと思って生きてきた。普通とは違う自分に怯え、同時にうっとりしていた。自分を特別だと考えていた。ちっとも特別じゃない。ぼくは六十五億分の一。人類の何十万年もの歴史の中の、たった十七年を生きているだけ。自分の存在が、人類の進化の過程にいくつも存在する失われた環(ミッシング・リンク)なんかじゃなくて、誰かと確実につながっていることがわかった。ぼくは自分のミッシング・リンクを発見したのだ。