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[佐々木譲] 廃墟に乞う


廃墟に乞う

廃墟に乞う


13年前に札幌で起きた娼婦殺害事件と、同じ手口で風俗嬢が殺された。心の痛手を癒すため休職中の仙道は、犯人の故郷である北海道の旧炭鉱町へ向かう。犯人と捜査員、二人の傷ついた心が響きあう、そのとき…。感激、感動の連作小説集。


『笑う警官』で知った作家さん。「オージー好みの村」、「廃墟に乞う」、「兄の想い」、「消えた娘」、「博労沢の殺人」、「復帰する朝」の六編からなる短篇集。短篇集とは知らなんだ。3年前のとある事件で精神的な病を負って休職中の刑事・仙道が現場復帰を目指してリハビリ中に直接な捜査員とは違う間接的な立場で事件に関わる小説である。仙道に相談を寄こす人はさまざま。昔仙道が担当した事件の関係者、はたまた容疑者・実刑を受けた犯人、上からの命令で立場上深く調べることができない警察官もいたりする。この作品の特徴は、警察小説ではあるけれど動きの制約がある休職中の刑事が主人公だということ。ある事件で仙道に直接連絡をしてきた依頼者、その事件の容疑者、直接捜査を担当する警察、そして求職中の刑事・仙道。4つの立場から1つの事件を紐解くというもの。ミステリーというよりもヒューマンドラマの印象が強い。2時間ドラマにはいいかも。第142回直木賞受賞。