Yasublog

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鷹揚に構える様式美



ミスタータイガース掛布雅之の初球打ちはほとんど見た記憶がないです。看板四番打者には長い時間打席にいて欲しい、という興行的な視点もあるはず。ヤクルト古田の配球革命から初球からがんがん好球必打するスタイルが確立したとは興味深い話でした。現代野球は王さんの時代よりも投手の球種や技術が格段に上がっているので追い込まれる前に仕留めないといけない事情もありそう。

 プロ野球通算868本という破天荒なホームラン記録を持つ王貞治(元巨人、現福岡ソフトバンクホークス取締役会長)は、全盛期の1960年代前半~70年代後半、ファーストストライクを見逃すことが多かった。投手の調子を計る、あるいは力量を計るという狙いがあったのだと思うが、「強打者は初球からガツガツ打っていかず鷹揚に投手に対し、不利なカウントになっても攻略する」という様式美が当時は球界に存在した。


鷹揚(おうよう):《鷹(たか)が悠然と空を飛ぶように》小さなことにこだわらずゆったりとしているさま。おっとりとして上品なさま。「―に構える」

 森はバッティングの積極性だけでなく走塁面で大阪桐蔭時代と同様、全力疾走を自らに課していた。楽天戦の第2打席で二塁打を放ったときの二塁到達タイムは、私のストップウォッチでは8.08秒だった。私が俊足の目安にしている二塁到達タイムは8.3秒未満なので十分速い。プロ1年目だった昨年の1月中旬、自主トレをしている森を取材して全力疾走について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「自分だけじゃないんですけど、大阪桐蔭は野球のプレー以外のところを大事にするという方針がありました。投げる、打つだけじゃなく、そのほかのところもしっかりしようというか、アウトになっても全力で帰ってきたりとか、外野フライでも二塁まで行くとか、そういうことを徹底していたので、そこは大阪桐蔭で自然に身につけられた部分なのかなと思います」

 こういう発言を聞いていると、大阪桐蔭高校野球界のトップランナーでいてくれることの有難みをしみじみと感じるのである。その牙城に早稲田実および清宮が3年間でどこまで迫れるのか楽しみにしたい。