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[宮部みゆき] 火車


火車 (新潮文庫)

火車 (新潮文庫)

休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。


消費者金融の闇をテーマに失踪した女性を休職中の刑事が追う物語。果たして人は人生をやり直すことはできるのか。物語の最後の最後まで関根彰子は姿を見せない。すべてが人伝いに聞く話である。最後の最後で・・・。いやはや、これはすごいミステリー小説だと思う。

大企業を動かすのは、ある意味、コンピュータによる自動操縦装置がついたジャンボジェット機を操縦するようなものだ。毎回毎回、シビアにパイロットの能力を問われることはない。だが、こんな零細以下の会社は、言ってみればロートルのプロペラ機だ。有視界飛行しかできない。コンピュータはあてにできない。パイロット一人の力量を頼りに、毎回の離着陸が命懸けだ。

それは、この業界自体が、壮絶な自転車操業しているからなんですよ。だから、貸して貸して貸しまくる。最後にババを引くのが自分のところでなければいい、という考え方だから、それができるんです。

なんでも呑み込み、たちまち同化させてしまう東京という街のなかに入っても、不思議と関西人だけは、持ち前の色合いを失わないものだ。関西弁も強靱な生命力を持っている。言葉尻はいわるゆる標準語になっても、イントネーションだけはけっして消えないから、すぐに関西出身だとわかる。