- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/12/21
- メディア: 文庫
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引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。彼の標的は―たった一冊の広辞苑!?そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、なぜか僕は決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまったのだ!注目の気鋭が放つ清冽な傑作。第25回吉川英治文学新人賞受賞作。
引っ越したアパートの隣人、河崎から「本屋を襲わないか?」と持ちかけられる大学生、椎名。こんな話から始まる現在と、ブータン人のドルジと琴美と、元恋人、河崎、ペットショップの麗子、連続して起こる動物の虐待事件、こんな2年前。現在と2年前の物語が交互に展開し、後半に行くにしたがって物語が交差していく手法は何度か読んだけど(カットバック形式というらしい)、この作家さんは「ゴールデンスランバー」もそうやけど、やっぱり上手いなぁと思います。伏線の張り方とか。物語にはいろんな言葉がキーワードになっていて引き立てていると思う。例えば、ボブジュランの「風に吹かれて」や、ブータン(ドジルの母国がブータンってところがポイントなんだと思います。アメリカでもなく中国でもなくインドでもなくブータンでないとこの小説は成り立たないのだと思うのです)、慇懃無礼、鳥葬、因果応報、バッティングセンター(はオマケ・笑)。全体的に仏門の本でも読んでいるような穏やかさがあります。と言っても宗教はよく分からんけど、何となくそんな感じがするのです。たぶん文章がとてつもなく上手いのでしょう。「ゴールデンスランバー」と同じように仙台が物語の中心地になっています。たまたまかな?
因果応報とは、
よい行いをした人には良い報い、悪い行いをした人には悪い報いがある。過去および前世の因業に応じて果報があるという意。
慇懃無礼とは、
言葉や態度などが丁寧すぎて、かえって無礼であるさま。あまりに丁寧すぎると、かえって嫌味で誠意が感じられなくなるさま。また、表面の態度はきわめて礼儀正しく丁寧だが、実は尊大で相手を見下げているさま。
判官贔屓とは、
弱者や薄幸の者に同情し、味方したり応援したりすること。また、その気持ち。