Yasublog

本、土木・橋梁、野球、お笑い、などについて書いてます。

[神永正博] 食える数学


食える数学

食える数学

  • 作者: 神永正博
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2010/11/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 6人 クリック: 106回
  • この商品を含むブログ (20件) を見る

数学は、実学だ。その数学で、何ができるか?―いま必要なのは、ロマンや教養ではない。大学→企業→大学という経路で生きてきた著者が考える「食える数学」とは?数学をいかに役立て、数学でいかに食っていくかに焦点をあてて書かれた一冊。


時間つぶしでジュンク堂をうろうろしていたときに何となく買った本。これがとても面白かったです。著者は数学者でありながら民間企業で暗号技術を開発したり一風変わった経歴を持っています。それゆえ数学を美しく華麗に方程式を解くロマンではなく実学として世の中に数学がどのうように役立っているかをいろんな例を上げてまとめてます。大リーグのアスレチックス、生命保険、mixi、油田探索などなど。数学苦手という人でも面白く読めると思いますよ。

直接、言わないまでも、数学の人々は、工学の数学的水準がいかに低いかをあげつらって酒のさかなにしているし、工学の人たちは、数学なんてなんの役にも立たない遊びだと言ってよろこんでいたりします。お互いさまなのです。

詳しい研究によれば、非線形性は「凝集性」を生みだすことがわかっています。凝集性とはなんでしょうか。たとえば、東京にはどんどん人が集まってきていますね。その理由のひとつは、人が集まれば集まるほど便利になり、仕事も増え、それがさらに人を惹き付けるという性質があるからです。これはあくまでたとえ話ですが、一種の凝集性といえるでしょう。

津波の方程式について話をすると、聞き手によって反応が分かれます。まず、一般の人は、津波がくると恐ろしいという印象を受ける方が多いようです。数学者や物理学者は、なぜ津波のような現象が起こるのかに興味を持ち、方程式をあれこれ調べたり、実験して方程式と同じことが起こるのかどうかを確認しようとします。
これに対して、工学者の反応はもっと前向きです。「津波を防ぐにはどうすればよいか」とか、「波が安定して伝わる性質を、何かに役立てられないか」と考えるのです。

先ほど数学を料理にたとえましたが、実際の仕事における数学は、まさに料理のレシピのようなものです。料理はおいしく作れればよく、なぜそうするとおいしくなるのかが解明できても、あまりうれしくないでしょう。

しかし、ご存知のとおり、仕事の現場ではそうはいきません。たとえば、製品開発するとき、やるべき範囲は決まっていませんし、答えがないときもあります。制限時間は場合によりけりですし、時間をかけさえすればすっきり解決するとも限りません。
こうした問題を「野生の問題」と名付けてみましょう。野生の問題では、既存の方法が使えるとは限らず、場合によっては、問題設定から考え直さなければならないことさえあります。解くべき問題はなんなのか。何がわかれば、問題が解けたことになるのか。

逆にいうと、なかなか理解できない人は、必ずしも頭が悪いわけではないと思います。「なかなかわかった気にならないのは、ある種の数学的才能」です。数学者の世界で、ときどき「早わかり」とよばれる人がいます。なんでもすいすい理解できてしまうし、恐ろしくなんでも知っているすごい人なのですが、創造的な仕事はほとんどできない。わかりすぎなんですね。どこにも引っかからない。どこにも引っかからないということは、どこも自分なりに掘り下げられないということです。頭がいいのに創造的な数学ができないというのは不思議ですが、そういうことがあるのです。数学を理解する能力と、数学において創造的な仕事をする能力というのは、べつもののような気がします。

実は、微積分と相性がよくなかったり、そもそも微積分を勉強していなかった人でも、その先におもしろい数学があるのです。その代表格が「離散数学」です。微積分が連続な(つながっている)対象に対して特に有効であるのに対し、離散数学は、飛び飛びの対象に有効な数学です。ある問題を解く手続きがどのようなものか、最適な解法は何か、という「アルゴリズム」の問題とも深く関係していることや、コンピュータが扱えるのは飛び飛びの値(離散的な値)だけであるため、ITにおいても重要な役割をはたしています。
どのような6人が集まっても、そのなかには互いに知り合いの3人組か、互いにまったく知らない3人組がみつけられる。
ふつうの国語力があれば誰でも問題は理解できると思います。なんだかあたりまえのような気がしますね。しかし、証明となると・・・どうでしょうか。