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[池井戸潤] 下町ロケット


下町ロケット

下町ロケット

取引先大企業「来月末までで取引終了にしてくれ」メインバンク「そもそも会社の存続が無理」ライバル大手企業「特許侵害で訴えたら、…どれだけ耐えられる?」帝国重工「子会社にしてしまえば技術も特許も自由に使える」―佃製作所、まさに崖っプチ。


これは単純に面白かった。著者の作品は『鉄の骨』以来2作目。宇宙開発機構でロケットの新型水素エンジンの開発を行う研究者だった主人公・佃航平は、実験衛星打ち上げ失敗の責任をとる形で退職し、父親が経営する佃製作所を継いだ。7年で売り上げを3倍にするなど経営は順調に見えたが、元来の研究開発型の経営により借金は増える一方。同じ頃、売り上げの1割を稼ぐ主要取引先が景気悪化に伴い佃製作所が納入していたエンジンを内作に切り替えるとのことで突然の取引停止を告げられるは、事情をしったメインバンクからは運転資金の融資を断れ、またライバル会社からは特許侵害で90億の損害賠償請求で訴えられる。また社内では、研究開発には手厚いが売り上げを稼ぐ部門からは還元されないとの不満があり社員の心もバラバラになっていた。八方ふさがりのなか、日本における衛星打ち上げロケットの生産を一手に担う重厚長大の雄、帝国重工が自社で開発した新型水素エンジンのキーデバイスであるバルブシステムの特許を申請したところ、数ヶ月先に佃製作所が同じ技術を申請済みであることを知って驚く。吹けば飛ぶような中小企業に先を越されてメンツが潰れた帝国重工であるが、その技術がないと新型エンジンは完成しないため、しかたなく佃製作所に20億円での特許の譲渡、最悪でも年間5億円で使用許諾を申し入れる。特許料が入れば経営は安定するし、その間に違う開発をすればいいという社内の声にも反し、佃は申し入れをどちらも断った。逆に佃から帝国重工にバルブシステムの部品納入を申し入れた。佃品質、佃プライド。自分たちで作った部品でロケットを飛ばすという夢が動き出した・・・。

自分の会社の強みはなにか?働く喜びとは?エンジニアの夢とは?社長の夢とは?いろんな問いに対する答えが詰まったすばらしい作品だと思う。

「俺はな、仕事というのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない」