- 作者: 濱口哲也
- 出版社/メーカー: 日科技連出版社
- 発売日: 2009/10
- メディア: 単行本
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
失敗学と創造学が目指すのは、自分で考え、新しいものを見出し、創り出す技術である。いかに上位概念に登り、知識化するかがその鍵となる。本書では、主に品質保証に焦点をあて、失敗学と創造学の考え方と手法を紹介する。
これは良本。システム設計や製品開発に関わるすべての人が読むべき本だと思います。
以下メモ書き。
報告書。事実はどうでもいい。言い訳こそ書き残せ。
マニュアルは行間を読め。行間を読ませるようなマニュアルは作るな。
リスク管理ではフィクションを語れ。
失敗は少しだけ形を変えてやってくる。
上位概念に登る方法
- 問答法(哲学分野で有名。ある主張や命題に疑問を投げかけながら議論することで、より真理に近づこうとする方法。否定しながら上位概念に登っていくという意味ではヘーゲルの弁証法といってもよい)
- なぜなぜ法
- カテゴライズ法
- 言い換え法
- 破壊試験法
- 仮定法
「つまり」で上位概念に登り、「例えば」で下位概念に降りる。
マニュアルの問題点
- マニュアル通りやっていれば大丈夫たま!というマニュアルを使う側の気持ちがいけない。
- そこに書かれていることがどれほど重要なことか(程度問題)が伝わらない。
- 真意(原理や理由やメカニズム)が伝わらない。
- 順番の重要性が伝わらない。
フールプルーフ= バカよけ
バカが近づいても大丈夫なように最初から設計しておけ。
フェイルセーフ
仮に間違えかけても、あるいは間違えたとしても必ず安全な方向に作用するから大丈夫、という設計精神
- 創造職
- 運用職(=すでにできあがったシステムをミスなく運用することで利益をあげる職種)
失敗学の大きな主張に、「小さな失敗は経験して、その経験や体験から知識を獲得し、それを利用して大失敗だけは未然に防止せよ」というものがある。その意味では、筆者の予防というのは大失敗の予防である。小さな失敗にまでヒヤリハットすら起こすな、と言っているのではない。
創造学とは発想や発明をするときの頭の使い方の一般法則のこと。
リバースエンジニアリング=「土俵ずらし」と呼べばいい。
相撲で言えば、「自分が土俵際に追い詰められそうになったら、土俵を掴んで自分が常に真ん中にくるように、土俵のほうをずらしてしまえ」という意味である。
米国が得意にとするMBAのカリキュラムに3C分析がある。市場・顧客、競合他社、自社を分析すれば成功するという内容である。
ソリューションビジネスというのは手段のことを言っているだろうか。確かに実質的にはそのように使われている。ソリューションビジネスとは、思考展開図を課題の方向に遡って、真の顧客の要求を見つけ出し、それを満足する設計解をダイレクトに提供することだと考えている。
考えは浮かんでくるものではなく無理やり作るものである。そのとき、人間は言葉を使って考えるのである。言葉は概念を表し、概念は行動となって現れる。
話はそれるが、解析はできるが設計はできないものの代表が経済である。公定歩合を引き下げたら、税金を上げたら何が起こるかという解析はできるが、「では好景気にするには何と何をどうすればよいか」という設計の問いには答えられない。
「御社にとってソリューションビジネスとは何ですか」と尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「お客さんは機械マニアではありませんから、複写マシンが欲しいわけではありません。お客さんがほしいのは書類の複写です。もっと言えば、そこに書いてある情報の複写が欲しいのです。ですから、我が社はお客さんがいつでも快適に書類を複写できる環境を提供します。さらに、複写マシンを買い取るというリスクを軽減してレンタルとしました。さらに、マシンに自己診断機能を持たせて、それをインターネットで当社の本社につなぎ、トナーが切れる前に、即座にサービスエンジニアがトナー交換に出向く。これが我が社が考えるソリューションです」