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[湊かなえ] 花の鎖

花の鎖 (文春文庫)

花の鎖 (文春文庫)

両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。驚きのラストが胸を打つ、感動の傑作ミステリ。


田舎の商店街にある和菓子屋さんとお花屋さんを舞台に3人の女性の物語が平行して進んでいく。登山、有名画家、なぞの人物K、中盤から3人の人生が交差し繋がっていくさまは、美しい騙し絵のごとく鳥肌もの。希代のストーリーテラーさすがの巧さですね。かなり複雑な展開なので相関図を作りながら読むか、2回目をじっくり読む必要がありそう。花のある生活いいね。それにきんつば食べたい。

『どろぼう、金返せ!』思わず、ため息が出た。褒められる行為ではないけれど、書いた人の気持ちはよくわかる。どんなにストレスがたまる仕事でも、毎月決まった日にお給料が入るというのはありがたいことだったのだ。P11

成人していたとはいえ、一度に両親を亡くした悲しみは大きかった。それまで病気一つしたこともなかった人たちが、ある日突然死んでしまったのだ。ヒマさえあれば祖母にらあたしをあずけて出かけていく人たちだった。留守番には慣れている。しかし、〈いつか帰ってくる〉と〈永遠に帰ってこない〉とのあいだには、深く大きな溝がある。P19

母と二人きりで過ごしてきたわたしにはその感覚がわからなかった。場所など確保しなくても空間がうまりきることがないのだから。ほどよく埋まった空間に、きちんと自分の場所があるのとは、なんともいえず心が落ち着くと知ったのは、どうこうかいに入ってからだ。わたしの家族。P156