Yasublog

本、土木・橋梁、野球、お笑い、などについて書いてます。

[松下雄一郎] ストレートという名の魔球


今シーズンの見せ場とともに振り返る、稀代の豪腕投手・藤川球児の人生とその思い、そして夢
今シーズン日本タイ記録の46Sをマークし、名実ともに日本球界最高のクローザーとして認めれた阪神タイガース藤川球児選手の初単行本が発売! 本書では、今シーズンのもっともハイライトになった試合にスポットライトを当て、打者たちとの対戦時における球児の心理変化を軸に、彼のこれまでの野球人生を振り返る、生きたドキュメントを展開。著者にはデイリースポーツの阪神担当記者として、長年球児を見守ってきた松下雄一郎氏を抜擢。松下氏だからこそ聞けた球児の思い、そして夢をあますところなく収録しているすべての野球ファン必見の1冊です。


2007年9月14日阪神vs中日20回戦9回表、同点の場面で登場した藤川球児と主砲ウッズとの11球の勝負は伝説と化しています。中日との優勝争いも佳境を迎えていたこの試合のこの場面、2アウト2,3塁で敬遠の策もあったのにあえてウッズとの勝負に臨んだ球児。なぜ勝負に行ったのかの答えがこの本の中にありました。いわく「引導を渡すにはこの場面しかない。このバッターをねじ伏せた瞬間、中日は優勝争いから脱落する・・・」プロフェッショナルの成せる戦いとはこのことなんだと思いますね。

野球に限らず勝負事ではいろいろな迷いが生じると思います。どうしようか、これでいこうか、裏をかいてみようか・・・。その結果がよい方にでることもあれば、逆にでる場合もあります。藤川球児のそんな緊迫の場面での考え方や広く野球感、阪神の絶対的抑えとしての哲学みたいなもの、共感と言ったら恐れ多いですが、さすが一流は違うなと感心読んでいて楽しかったです。

悔しさをバネにするためには気持ちを「切り替えないこと」がもっとも重要なのだという。負のイメージをとことん引きずればよいのだという。そしてその中で悔しさを晴らした時、人は初めて成長できるのだと、球児は言う。
「気持ちを切り替えて、次がんばります」敗戦後の選手がよく口にするコメントである。しかし球児はこの言葉にどうしても違和感を感じるのだ。「単なる表現の差かも知れないけど、やっぱりそれは違うと思う」

切り替えない=逃げない、ってことかも知れませんね。失敗の現実を直視して乗り越えないと成長できないと。同じようなことを松坂大輔イチローも語っています。

「悔し紛れでもなんでもなくて、成功のためには失敗も必要だよな。失敗したイメージを心の中に植えつけて、どうすれば成功できるのかを考える。それが成功への一番の近道だと思う」(松坂大輔

「時には失敗することもあるよ。でも大切なのは、それをどれだけしっかり受け止められるか。失敗を忘れたら絶対に成功しない。成功してないやつほど、それに気づかない」(イチロー

「これだけの声援をもらっている。チームの生き死にを背負っている。その期待に応えられなかった時には「なぜそうなったのか」を話す義務がある」打たれて笑みを浮かべるのは、チームに動揺を与えないため。打たれた時ほど語るのは、その理由や心模様をファンに伝えるため――。猛虎の運命を背負っていると自覚した日から貫く球児の哲学。その考えは今でも変わらない。