トンネル用語に「切羽」という言葉があります。「きりは」と読むのですが、何を表すかというとトンネルを掘るときの先端のこと。掘り進めるためにドリルを当てる場所といえば伝わるでしょうか。橋梁の工事現場は周囲から見える場所が多いので一般の人でも目にすることができますが、トンネルは山の中を掘っていくので一般向けの現場見学会でもない限り普段目にする機会はありませんね。先日あるトンネルの工事現場を見学する機会に恵まれたので興味深く勉強してきました。
追い詰められることを「せっぱつまる」と言ったりしますが、これも「切羽詰る」と表現して「きりは」と同じ漢字を使います。由来は諸説あるようですが、「きりは」も「せっぱ」も行き止まりの場所を指すのは偶然にしても面白いですね。
工事中のトンネル内部はうす暗くて神秘な空気が漂う空間でした。「切羽」にたどり着いてしまったときに行き止まりとみるか、道具を探して掘り進むのか。トンネルを抜けた先にはその人にしか見えない景色が広がっています。人生で壁にぶち当たったときのさまとダブらせてみると、橋を「架ける」仕事も、トンネルを「掘り進む」仕事も、「聖職」と呼ぶにふさわしいと感じました。